kiji

2015.12.18 音を言葉で
 前回無形のものを表現する抽象画について記したが、その中で「これらは見えないものであるので、当然ではあるが、表現するとなると言葉が一番適している」と記したので、実例として、 今回は音を言葉で表現する短文を作ってみた。想定するシーンは「ある雪の日の外出」としておく。
 「とある雪の降る寒い晩のことである。私は近くのコンビニに行くため家を出た。外は粉雪が舞っており、既に3センチほど積もっていた。一歩足を踏み出すと、サクッという音がして、ブーツの足跡がクッキリと見て取れる。サラサラの粉雪がピューという音を伴って身体に吹き付ける。足元が覚束なく鉄のマンホールの蓋の上に足が乗ると、ツルッと滑って危なく転びそうになる。オットットと独り言して、身体を立て直す。脇を車がガリガリというチェーンの音をまき散らしながら通り過ぎていく。前方にボーと白い窓明かりが見える。間もなくコンビニに着いた。
 グイッと扉を押して中に入る。熱気が身体を包み込み、防寒コートに付いた雪が水滴となり、ポタポタと滴り落ちる。カウンターの脇のおでんの鍋がグツグツと煮えて湯気を立てている。急に腹の虫がグーと鳴った。」とこんないった具合に、音を言葉で表現してみた。かなりこじつけの部分もあるが、日常私たちが表現する音は切りなくあるようだ。今回示したのは、僅かに11個である。
 こうした音を専門にまとめた辞典がある。日本語オノマトベ辞典というもので、ここには4500もの擬音語、擬態語などが収録されている。作家によってはこのような言葉を使うのを極端に嫌う人もいるが、目に見えないものを言葉で表現する場合には、こうした辞典の助けがあると、表現の近道となるのは確かなようだ。


 
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