2015.6.12 今だけのアート
実際に実物を見たわけではないが、町中(なか)では瞬間芸のアートが盛んなようだ。
これはテレビで見たものだが、路面に水で絵を描く、それも鉛筆でスケッチブックに書くようによどみなく仕上げていく。その手際の良さと、仕上がりに驚かされる。太陽の強い光の中では、直ぐに蒸発してしまうからまさに泡沫のような儚い一瞬の美といえよう。これはウォーターアートと呼ばれている。この反対に雨の日に道路に浮かび上がるストリートアートというのも、最近話題になっている。これはアスファルトに超撥水性スプレーで文字や絵を描くもので、それが雨が降ったり、水をかけると水を弾いて浮かび上がるというものだ。
同じような傾向のアートとして、コーヒーアート(ラテ・アート)がある。喫茶店のバリスタ(コーヒーを淹れる職人)が客を楽しませるために考え出したもので、これはエスプレッソの表面に、ミルクピッチャーから出るミルクの流れを操って、バラやハートマークなどを描いて客に出す。飲むのが惜しいような作品もある。
氷の彫刻なども保存がきかないものだからいっとき目を楽しませるアートといえよう。これと似たものに、伝統的な和食のお造りなども芸術の域に達しているものがある。まるで生け花のように美しい盛り付けは、コーヒーアート同様、箸で崩すのが惜しい。
これら一瞬の命のアートは殆どが職人技である。年季とセンスがそれらを生み出している。ほんの束の間の美であるからこそ値打ちがあるのだろう。
アートというと芸術家の作品で絵画や陶芸のようなものに、値打ちをつけたがるものだが、これらの町中アートは、遊びの要素が強く、アイデアから発展して、その技を磨き、アートと言われるほどに人の心や目を楽しませるもので、無償の美と言えるだろう。
人たちの生活に溶け込んでその中で「うるおい」を与えてくれる「今だけのアート」、豊かな社会であればこそ、こうしたアートが生まれる。遊び心が羽を伸ばせる社会は平和だと思う。
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