kiji

2015.9.15 十五夜(名月)
 私の子どもの頃は木造家屋の殆どに縁側があり、更に濡れ縁と言って 雨戸の敷居の外側に設けられた雨ざらしの縁側があった。その前には小さな庭があって、そこで焚き火をしたり、正月には餅つきをするなどの、ユーティリティーな場所として使われていた。
 十五夜は年中行事の大きな祝い事の一つでこの日(今年は9月27日)には、この濡れ縁に白木の三方を置き、芋、団子、枝豆、栗の茹でたものなどを山盛りにし、脇には、酒壺のような形をした花瓶にススキの穂(本来は稲穂)を飾って満月の月を愛でる習慣があった。
 子どもたちにとっては「花より団子で」お下がりの供物を分け与えられて食べることが出来るのが一番の楽しみだった。じっくり月を眺めて、一句を読むなどという風流とは程遠いものであった。歳時記には名月を詠んだ名句があるので紹介しておこう。松尾芭蕉は「名月や池をめぐりて夜もすがら」、小林一茶は「名月を取ってくれろと泣く子かな」
 こうした風習はわが町のような住宅密集地では見ることがなくなってしまった。地方ではまだ多くの所で十五夜を祝う慣習は残っていると思う。収穫を神に感謝する行事であるので、農村地区では現在でも祝い事をするとは思うが、収穫間際の2,3日前に大雨が降り、大洪水があった茨城、栃木、宮城などの被災した農家は、ゆっくりと祝えない状態なのは痛ましいことだ。
 十五夜について、少し調べてみると(日本の年中行事事典:吉川弘文館)「十五夜は月見、芋名月、栗名月、豆名月などとも呼ばれ、秋の収穫を祝う行事であった。併せて満月を鑑賞するという風流な行事で、古来中国では、この夜を秋の中心という意味で「中秋」といい、名月を愛でる中秋節が行われた。
 日本にも奈良時代に伝来して宮中で行事が行われた」という記述がある。
 もし、今年の十五夜がが晴天で満月を観ることができるなら、集合住宅ののベランダから団子抜きでじっくりと鑑賞することにしよう。






 
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