kiji

2015.9.7 食は秋に限る
さんま さんま さんま苦いか塩っぱいか。
そが上に熱き涙をしたたたらせて さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ げにそは間はまほしくおかし。
 この一節は佐藤春夫「秋刀魚の歌」の最終節である。私と同世代なら、誰もが一度は耳にした歌である。
 この歌の意図とは関係なく、さんまは「秋刀魚」と書くくらいだから、秋を代表する味覚であることは間違いない。他にも秋に出回る食として人気のあるのが、昨年の「秋の味覚ランキング(ドゥ・ハウス)」によると、次のような食物である。
 筆頭は、やはり「さんま」(53.2%)次いで「栗」(43.2%)「松茸」(30.9%)「柿」(26.6%)「梨」(26.2%)「新米」(16.6%)「さつまいも」(14.4%)「松茸以外のきのこ」(11.3%)「鮭」(7.8%)「銀杏」(7.1%)となっている。
 どれも(松茸除き)庶民の手に届く食物ばかりだ。今年の秋中には全種類口に入りそうな気がする。
 ちなみに、私は魚嫌いで、さんまの焼き物も2つに切り分けた尻尾の方しか食べない。上の方は内臓があるし、小骨が多いので苦手だ。鮭は焼いた塩鮭をほぐして握り飯にしたものは、弁当で始終口にする。これは旬とは関係ない。
 栗は好きである。特に茹でた丹波栗の大粒のものは、ホクホクして美味しい。「クリより美味い13里」として知られるさつまいもは、栗に劣る。これは幼少時に甘藷で糊口を凌いだ時期があったトラウマか。栗ご飯もやがて食膳に供されると期待している。例外にあげた松茸は「松茸ご飯」として1回ぐらいは賞味できるかもしれない。しめじなどはよく食卓に出るが、味しめじというほどには私は好きではない。
 果物は、柿と梨があるが、両方とも好きだが、梨それも20世紀梨のあの瑞々しい姿と水分十分な甘い果汁がたまらない。最後に挙げられている「銀杏(ぎんなん」だが、今はまだその時期ではなく、あの強烈な果肉の匂いとは違い、実の部分はおでんによし、焼いてよし、噛み心地もまたよい。
 秋は始まったばかり、秋の味覚を実感するのはまだ先だ。





 
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