雲ひとつ無い寒々とした夜空を見上げると、まんまるの月が煌々と光を放っている。月には不思議な魅力があり、じっと眺めていると心まで澄んでくるような気がする。太陽が東から昇り夜は終わるが、太陽をまともに見つめて感慨に浸るなどということはない。太陽は日の出とともに丸いままの姿を崩さない。 一方、月は一定の周期でその姿を変える。新月(朔)から上弦、満月(望)、下弦となり、また新月になる。旧暦では1月の長さを月の動きにより定めた。この旧暦では暦を次にように定めている(暦の読み方:日本実業出版社1979年刊)。
「新月から新月までを1月とし、1月は平均すると約29.5日となる。通常1月は、29日と30日とになる。そして、29日になる月を「小の月」、30日になる月を「大の月」という。これで12ヶ月を1年とすると、1年が約355日となり、太陽の周期に比べ10日ほど短くなってしまう。これを調整するために設けられているのが、「閏月」である。つまり閏月のある年は、1年が13ヶ月になり、だいたい3年に1度の割合で閏月が存在するのである。このように暦を作ると、太陽暦と朔望月との差が220年間で約1日となる仕組みとなる」。
農耕民族の日本人は、種まきの時期など季節を正確に知る必要があった。ところが、旧暦では暦の上での月日が、季節に対して1ヶ月も前後にずれる場合がでてきた。そこで暦に季節の推移を示す基準点として、立春・雨水・啓蟄・春分などで知られる24節気が置かれた。これは太陽年の長さをもとに決められ、月の動きとは無関係である。こうした長い時間をかけた知恵の結晶が暦の誕生には生かされているのだ。