2016.11.14 練習と本番(中編)
今年限りで引退を決めた広島カープの黒田投手は、最後の試合まで自分のベストプレイができた選手だ。
私はかつてのスラッガー、青バットで知られる最近亡くなった青田昇氏が残した「108の遺言」というエッセイ集を読んだ。
読んで感じたことは「言葉のひとつひとつが自由奔放で、それでいて人への気配りと節度を忘れていない。これは現役時代と変わらない。彼もまた本番でより以上の強さを発揮した」ということだ。
一方でブルペンピッチャーといって、練習では物凄いボールを投げる。ところが一度マウンドに立つと、緊張の余りガチガチに固まり、ボールが走らず(キレがないなどという)ボカスカ打たれたり、フォアボールを連発して1イニング持たずに引っ込む選手も多く見てきた。これなどは本番で自分の力を発揮できない例である。
そこで青田氏のエッセイからひとつ引用させてもらう。
『オレの一番のガチガチ体験は、甲子園で選手宣誓をしたときですよ。1952年高校3年の夏に甲子園に出場したときに、オレはね、なんだか胸騒ぎがした。そうしたら大役が当たった。でもオレはそんなに大変なことだと思わなかった。
「われわれはスポーツマンシップにのっとり、学生らしく正々堂々と闘うことを誓います」
たったそれだけのことですから「大丈夫ですよ」と校長先生に言いました。ところが校長は甲子園近くの浜辺にオレを連れて行き、何度も大声で練習させるんです。特訓の意味が当日わかりました。いざ入場行進となったら頭が真っ白になり、しょんべんがちびりそう。そこから先は覚えていません。開会式が終わって仲間に「よかった」と言われて我に返ったくらいです。我を失いながらも校長先生の"1000本ノック"のおかげで口が動いたんですね』
練習が底力の発揮に欠かせないことを見事に表現している。
(紙数の関係で中編としました。後編に続く)
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