2016.9.20 花を愛する人たち
秋の花は春の花より数も少なく地味な感じがすると、先のコラムでも書いた。
ところが、散歩しながら目に映る人家の前の道端に置かれた鉢には結構色々な花が植えられている。おそらく園芸店などで購入した品種だろう。道端に生える山野草とは一味違う風情がある。庭があるわけではなく、家の玄関先に何鉢かの花が植えられている。長屋のように続く玄関先に置かれるのだから、少し言い過ぎかもしれないが、花に埋まった沿道と化す。これが「しもた屋風」の家が軒を連ねる下町の風物詩ともなっている。気に入るとカメラに収める。むろん花の名など分からないから、家に戻ってから図鑑で調べる。イラストの図鑑 「原色牧野植物大図鑑」などは、花の特徴や葉の様子がはっきりしていて分かりやすい。このホームページでも花や樹木のイラスト紹介しているので、描画の助っ人としても役立つイラスト図鑑だ。
話が脱線したが、鉢植えの花を愛でる人はどのような心根を持っているのだろう。
明治の大政治家にして早稲田大学の創始者大隈重信は、大変な園芸家で「花を愛する人に悪人はいない」と常々語っていたという。秋は菊の季節。大隈邸の700~800種の菊は栽培するだけではなく、交配して新品種を作り出し、観菊会を催し外国大使や公使をはじめ多くの著名人が訪れたと伝えられている。
こうした話からも町の園芸家はきっと善人ばかりなのだろう。立派な家に広い庭の邸宅に住んでいるわけではない。
しもた屋住まいの心根の優しさが伝わってくるような気がする。
軒先に並んだ鉢植えの花は、道行く人の心を癒やしてくれるに違いない。
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