空には顔がある。一年365日全く同じ表情を示すことはない。色々と変貌する。その化粧に一役買うのが雲である。
とくに、秋から冬にかけての夕暮れ時の空は詩情溢れる光景を創り出す。私は夕暮れ時の散歩は、空の景色の移り行く様に魅了される。
見上げた空の見どころは、天高く広がる雲の形が様々な模様を描く、大きなキャンバスに見えるところだ。動画(image)で紹介した「雲 ゆく秋」で見る雲は、すじ雲やおぼろ雲などの、高層に広がる雲の種類に属する。飛行機が飛ぶ遙か先の上空15,000mに位置するものである。
小春日和の一日、夕刻近くに散歩に出かけ、いつものように空を見上げると、東の方にはウロコ雲の合間にほの白い月が顔を覗かせている。西の方には今まさに沈もうとする太陽がオレンジ色の光を放ち、周囲の雲を紅葉のように紅く染めている。東から西へとグラディションがかかった絵画を見るような大パノラマの世界がそこには展開する。
空は雲と光という筆を自在 に使って、壮大なパノラマ画像を創造する。その絵は瞬時に変化する不思議な絵となって、目を楽しませてくれる。
11月も終わりに近づき、冬の気配が強まっている。北国からやっと雪の便りが届いた。
雪は低く垂れさがった雲から、小さい粒となって地上に舞い落ちてくる。空から地上に垂れ下がったカーテンのようにも見える。
一方、関東地方はどんよりとした灰色の厚い雲が、空を一色に塗りつぶし、時には雨粒も落ちてくる。雨にも何種類もの名前が付けられているが、これらも空の変化に使われる小道具に過ぎない。
場合によっては、ここに音響効果も加わる。冬なら木枯らしのピューピューという音であったり、夏ならゴロゴロ、ガーンと言った雷の音だ。雷はフラッシュのような稲妻という映像効果さえ使う。
空はその広さと奥行き深さで、不思議なデザインを施す。空気が澄んでいて晴天の夜空には、群青の中にちりばめた宝石のような、無数の星の輝きを見せてもくれる。
私たちの住むこの地球も、宇宙という大きな空の下では、単なる星屑の一つに過ぎないに違いない。
こうしてゆっくり空を眺めて、我を忘れることができることの幸せを喜ぶことにしよう。