日常細事


kiji

2017.1.30 収納(衣類)
 このコラムのテーマについては、今年は日本の文化や伝統を見直すこととしている。
 前々回は「家具(収納の一部だが)」を取り上げたが、今回は「収納(衣類)」について考察する。
 私の身の回りの収納について観察すると、まず衣類だが、これらは箪笥やハンガーなどで壁にかけているものが多い。季節に合わぬものは、衣装ケースに入れて押し入れや、箪笥の上に積んで置き、出番を待つ。他には洗濯籠(かご)なども入れ物になる。日本の伝統的収納具をこれに当てはめると、次のようなものが見当たる。
 昔の呼び名で上げると、「櫃(ひつ)・長持(ながもち)・葛籠(つづら)・行李(こうり)」などがある。
 櫃は形は大小あるが大形の箱で蓋のあるものをいう。古くからあるものに「唐櫃(からびつ)」がある。その名が示すように大陸から渡った収納箱で、箱の下に四つまたは六つの脚がついている。
 いまでも正倉院に数多く遺品として見ることができる。脚のつかないものがあり、これを「倭櫃(やまとびつ)」といい、日本独自のものであることが分かる。
 これがその後、室町時代に倭櫃の長大なものを特に 「長持」と呼ぶようになった。よく映画の大名行列に出てくる駕籠のように長持の上に担い金具を取り付けそこに棹を通して担いでいるシーンを見かけるが、これは「長棹」とも呼ばれた。明治の頃までは嫁入り道具の一つであったが、大正に入り廃れていった。
 葛籠は衣類などを入れる長方形の収納具の一種。元はツツラフジの蔓(つる)を編んで作った籠で葛羅と書いてツヅラと読ませた。後に藤蔓・タケ・檜の薄板を編んで作るようになった。その箱の周囲に紙を貼り、渋・漆などを塗ったものが、元禄時代に作られるようになった。これなども時代劇映画の一シーンにはよく見かける小道具だ。これも嫁入り道具の一つだったが、大正時代には姿を消していった。
 行李は私の子供の頃には家にもあり、行商人が担いで商売する姿も見かけた。「柳行李」とか「竹行李」というのがあり、前者は柳の枝(川柳の小枝)を並べて麻糸で編み綴り、角に皮・布を被せて補強する。竹も素材が安価で加工しやすく静岡県の御殿場地方が主産地だった。行李は一人一個の着替えや手回り品の収納具。日本人の簡素な暮らしのをよく表している収納具と言えよう。
 今は民芸品的価値のある道具として見られているが、結構実用に向くので新しいスタイルで再登場するかもしれない。(参考文献:日本を知る事典)




 

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