2017.2.21 古来の調度品と錠前
日本の家具(2017.1.24)でも取り上げたテーマだが、今回は今はあまり見られなくなった家の調度品と錠前を取り上げてみた(日本を知る事典)。
奈良時代の絵巻などを見ると、部屋の間取りをせずに仕切りに使う調度品が多く存在した。どのようなものかと言うと、防寒・防風や人目を避ける目的のために各種の屏障具(へいしょうぐ)が広く使われている。
その中には今では文化遺産や古民家または映画でしか見ることができなくなったが几帳(きちょう)・屏風・簾(すだれ)などを上げることができる。
また家の開口部や間仕切りための用具は建具というが、これには板戸・雨戸・格子・蔀(しとみ:格子に板を張って長押から釣り下げ日光・風雨を防いだ)などが使われた。
部屋の間仕切りなどは夏などは取り外し、簾や暖簾(のれん)を吊るのが一般的だった。民家の入り口に小さな潜り戸が付いているのを時代劇などに出てくる大店で見かけるが、これは店の入り口などにある板戸の一種で幅約一間の重い戸で大戸と呼んだそうだ。
板戸は杉板を貼ったものを杉戸と呼び、屋久島の千年杉一枚板を用いたものが最高級品とされた。
家の開口部から泥棒などの侵入を防ぐためには錠前が考えられるが、昔は割合軽微な守りでしんばり棒や閂(かんぬき)などを使った。村などは村人の連携が強く、外来者は疎外されたので、住家の鎖錠を必要としない所も多かった。ただ別棟になっていて無人で、しかも食料や大切な衣類・器物などを保存する倉土蔵・納屋とか寺社などは、錠を取り付けて防御した。錠の単純な形式は「さる」と呼ばれる辷り(すべり)桟を下端に取り付け、それを柱などに穿った受け穴に差し込むという形式が多く、これを開けるには戸に穿った小穴からクの字型のカギを差し込み、その先端のかかりで「さる」を引き上げるという凝った仕掛けであった。
南京錠(江戸時代に渡来した小型の鍵つきのもの)もあったが、近世では珍しいもので、普及するのはずっと後の世の中になってからである。
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