2017.3.31 寝具あれこれ2(mono)
寝具に歴史ありというのが今回のテーマ。
眠るための道具である寝具は、今と昔ではすっかり様変わりしている。『日本を知る事典』によれば、布団に綿を使うようになるのは、江戸時代中期と言われ、それ以前は考えられない原始的寝具事情が見られる。
床に敷かれるのは富貴を問わず茣蓙(ござ)の類が使われていた。農家などでは土座や板敷の上に、籾殻(もみがら)・藁(わら)・海藻などをしき、その上に菰(こも)や茣蓙を敷いて寝たり、また藁の中に潜って寝ることもあったというから、眠る環境としては劣悪な環境であったことが読み取れる。布団(蒲団)は藁や茣蓙で見た目はサンドイッチかハンバーガーといった有様であったろう。
江戸時代に入り綿が大量に出回ってから、綿を入れた布団が作られるようになった。それでもなお藁を芯にした「藁布団」も長く使われていた。
上掛け(掛布団)は普段着ている着物を掛けていたが、中世以降上層階級では大きく着物形の衾(ふすま)という今でいう夜着・かいまきの類を上掛けにしていたが江戸時代になって綿入れの掛布団が作られ、それが普及していった。
敷布団は三布(みの)「三布は三幅のことで並幅3枚分の布幅(三尺幅)のことを示し、布団を仕立てる時などに用いられる。布幅の呼び名として他に一布(ひとの)、ニ布(ふたの)、四布(よの)、四ノ半(よのはん)、五布(いつの)などの種類がある」・四布・三ノ半が多く、掛布団は四布、四ノ半、五布が多く用いられた。夏掛けは布・丈・厚さとも小さくしていた。布団を蒲団と書くのは、綿のない時代に蒲(がま)の穂を入れたことに由来する。
次に枕であるが、明治以前は髪型も様々で枕もそれに合わせたものが必要だった。古くは菅枕・こも枕・木枕が使われた。木枕は木の箱の上に小さなくくり枕を付けた「箱枕」と呼ばれるもので、近代まで使われていた。 木枕の底を舟底のように湾曲させた「舟底枕」は日本髪の女性に長く使われた。浮世絵にも見られるように凝った枕もあり、漆塗りや、蒔絵にした立派なものや、その一端に引き出しを付け、髪飾りなどを入れるものもあった。男が斬髪になってからは「くくり枕(坊主枕)」が用いられるようになった。枕の中身にはそば殻、もみ殻を入れるのが普通で、中にはあずき豆を入れたのもあり、頭が冷えるのでよいと珍重されたという。現代でも枕の中身にはそのようなものを入れたものが残っている。(完)
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