2017.5.11 生活の知恵(最終回)
今まで日本人が長い暮らしの中で培ってきた生活の知恵について考察してきたが、最終回はこれから日本人は如何にして伝承されてきた固有の生活の知恵を、更に深めて新しい時代に引き継がれるようにして行くかについて考えてみる。
古いものを使う工夫や、今あるモノを生かすことに独特の知恵を働かせてきた。この日本人の才覚はどの国も認めることだろう。一方、新しい革新的変化を生み出す能力には力不足の感は否めない。英語で技術革新をイノベーションと言い、再活用をリノベーションと言う。
後者に関しては実証済みだが、前者については、世界の最先端をいっているとは言い難い。というのが現状だ。
振り返って考えると、匠の技は際立っている人間が、新技術を生み出せないわけはないはずだ。全ては基礎技術の上に成り立ってると言うことは誰もが認めることだと思う。
例えてみれば、一流の野球選手は自分の時間を遊ぶことより身体を鍛えることに振り向けるという。長いペナントレースに生き残るためには並みの体力では間に合わない。彼らは口を揃えて「練習また練習を続ける」という。これが示すように技術革新もまた単なるアイデアだけでなく、そのベースになる基礎体力のようなものが欠かせないのではないかと思う。
今まで述べてきたように日本人にはその基礎体力が備わっている。そこにどのような知恵を加えれば進化したモノが生まれるのだろうか。人は容易に振り返ることはできるが、先を見通すことは極めて難しい。しかし、試行錯誤の末にしかイノベーションは生まれないだろう。
前にも記したが、「江戸庶民は多くの制約や、モノが不足する中で、心豊かな日々の生活を送っていた。お互いが助け合うことを厭わず、その知恵と工夫でたくましく生き抜いた」と歴史が語っている。
現代はIT社会の真っ只中にある。この現象がもたらすのは、個の重視で自分一人で生きていけるという錯覚を特に若い人にもたらしているようだ(悟り世代」などと名付けた人いる)。人はその文字が示すように支えあって生きていく動物である。このままでは心の通わない人工知能が人を支配する暗い未来しか見えてこない。
今一度立ち止まって人との結びつきを大切にし、心豊かな世界を取り戻すことが、伝統的持続的生活の知恵を21世紀に生かすことに通じる当面の課題だと思う。
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