2018.6.19 腹八分(1)
「腹八分で医者いらず、腹六分で老いを忘れる、腹四分で仏(神)に近づく」これは、ヨガの言葉を抜き出したものである。
この言葉の言わんとするところは、食事は満腹になるまで食べるのでなくて、やや控えめな分量に留めておく方が健康や長寿に良いという意味である。
そもそも「腹八分」とはどこを指していうのか、人それぞれの感覚に委ねられるところが多く、極めて曖昧である。また、なぜ腹八分目がいいのかも、あまり知られていないところでもある。そこで、科学的見地から、腹八分目を解明することにする。
日本での研究事例は、東海大学医学部・橋本一男教授と、田爪正気講師らの実験によるもので、食事の量を一定量に制限されたマウスのほうが、1.6倍強も長生きしたという結果が報告されている(1990年発表)。
その後も、さまざまな方面で研究が繰り返された結果、一定のカロリー制限をすることによって、細胞の老化を遅らせることができる、という事実が明らかにされた。
これによって動脈硬化が招く脳卒中、心筋梗塞、高血圧、また細胞の機能不全によって引き起こされるがん、さらには糖尿病など生活習慣病の予防に、この腹八分目の効用が指摘されるようになったのである。これらの実験は、マウスや猿を対象にしたものである。
人間を対象にしたものとしては、米国の8人の研究者による自給自足のサバイバル実験によって、腹八分の効用を数値化して表すことに成功している。それによれば、1日の摂取カロリーは約1800kcal。その結果、8人全員の体重が減少、また生活習慣病に関する数値(血圧、血糖値、コレステロール値など)も、ほぼ減少したことが実証された。
次に、実際に制限するカロリー量について説明すると、日本人の平均的な1日の総摂取カロリーは、約2000kcalである。仮に、腹七分目として30%カットした場合、1日の総摂取カロリーは1400kcalになり、糖尿病食とほぼ同じになる。これでは、一般的な日常生活を送っている人には少な過ぎるので、ここでは腹八分目(20%カット)で計算していくことにする。ここでは過剰摂取気味の「脂質」をカットして、400 kcal削減を目指すことが肝要である(1600kcal)。先に示したアメリカ人より200kcal少ないのは、体の大きさの違いに起因すると考えられる(リズム編集部HPを参考に作成)。次回に続く。
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