日常細事2018


kiji


2018.7.20 「市(いち)」
 祭りに関連して出店などが出るが、このことを「市」が立つなど言う。この「市」とは人が集まる場所に立つ。人が商いをするということは昔からの習いであるが、今回はこの「市」について調べてみた。
 「市」は市場とも呼ばれるもので、普段でも私たちが生活していく上で身近な存在である。マーケットなどとも言って、私に記憶では商店街の中に細長く八百屋・魚屋・肉屋・日用品の店が細い道路を挟んで立ち並んでいた。アメ横のようにごちゃごちゃして、イキのいい呼び込みの声が響いていたものだ。その多くが今は姿を消している。
 その歴史を探ってみると、「市」は大昔から存在している。まだ荘園(デジタル大辞泉によれば、奈良時代から戦国時代にかけて存在した中央貴族や寺社による私的大土地所有の形態。また、その私有地とある)が残っていた時代、地名に残る四日市と呼ばれるような地方市場が生まれ行商人が活動した。 
 定期市の立つ日(市日)としては、「八の日」や「三斎市」(さんさいいち)が多い。市日が「八の日」であれば、8・18・28日に市が立つ。市を開く時間によって、朝市・夜見世・夜市・夕市などと呼ばれた。
 もう少し深く調べてみると三重県四日市市や旧滋賀県八日市市(現東近江市)、広島県廿日市市、旧千葉県八日市場市(現匝瑳市)などの名称に昔の名残をみることができる。
 この時代は中央市場に問屋が集まる一方、小売市場では、振売り、野市、出売り、立売りなどが見られた。元々は生活必需品の物々交換であったが,商人の出現や貨幣の流通によって「市」も変化していった。
 「市」は人の多く集る交通の要地に立ち,その開催は初めは一定していなかったが,次第に定期的になった。日本では,古くは祭礼や歌垣のときに「市」が立ったらしい。
 その名残が寺社の縁日に「市」が立つように現代まで引き継がれている。私がよく通ったのは年末年始に開かれる東京の「世田谷のぼろ市」で、そこに足を運ぶとノスタルジーを感じる。そこでは売り手と買い手の息が合う取引がある。値段はやり方次第という面白さがあり、こうした売り買いのコミュニケーションが「市」に残る最大の魅力であろう。



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