2018.7.24 伝統工芸(技の伝承)
よく昔のモノは、細工は手が込んでいて、丈夫で長持ちし、その上美しいという声を聞く。
昔家にあった家具や建具を見てもその技が生きていた。桐ダンスや洋服ダンス(私が生まれた時に既にあったもので、今我が家では一番古い家具である)は、一部破損しているが十分役立っている。
伝統的匠の技を見たければ三渓園に行くとよい。そこには匠の技がたっぷり鑑賞できる古い民家(合掌造り)や、庭園のどこからでも見える旧燈明寺三重塔【重要文化財】(1457年建築)などがあり、中に入ってゆっくり観察すると、全体が優れた技術や建築材の集合体に魅了されること請け合いである。
こうした匠の技は一朝一夕に生まれるわけでないことは言うまでもない。長い歴史の中で培われたもので、その技も伝承されることでいい仕事ができることになる。
木造の建物・建具。舟を見ても、殆ど組み合わせの技(箱根の寄せ木細工はその最たるもの)で力を分散させ全体に行き届いたバランスを産んでいる。
建具などは釘を使っていない。和船などには後で示す和釘というものを隠れた部分で使われているが,外見で見えることはない。
三渓園の屋根の下の仕組みを見ると、細長い角材がびっしりと幾重にも組み合わせられている。それを支える大木の切り株のように太い樫の大木であろうか実に精緻な彫り物が施され、飾りのようであっても十分に重い屋根を支える機能は発揮している。これは一種の遊び心かも知れないが、そこに雅な宮大工の腕の冴えを見る。
私のHPでも紹介している北斎の「神奈川沖浪裏」や「千絵ノ海(総州銚子)」の舟を見て頂きたい、ここに船大工の技を窺い知ることができる。
強風で荒波にもまれる中で漁をする舟は如何にもスマートな形をしており、木の葉のように波に翻弄されているのに安定しており、巧みに波に乗っている。これを見ると、船頭の腕もさることながら、命を託す舟に絶対的信頼を置いているからなせる業である。人の命を預かる船大工の匠の技と心意気をそこに見る。
今でも船大工の技は継承されているが、一つの和船を作り上げるのには和釘が500~600本が必要で鉄製ではあるがŁ字のような形をしており、海の水にも錆びない特殊な釘だが、現在では、人材不足でその技術の伝承は難しいという。
こうした伝統工芸が今に残るのは、古くからの知恵の集積と、それを形に変える業師がいたことの証だと言えよう。
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