日常細事2018


kiji


2018.8.17 子どもの遊び(5)
 外で遊ぶ最も楽しくてスリリングだったのが、丘陵の天辺(てっぺん)に大きく広がる麦畑と前回紹介した湧き水の出る崖に至る雑木林や藪、所有者不明の放置された段々畑をテリトリーとする遊びである。
 記憶では秋だと思うが、一面濃い緑の麦畑脇の小道で仲間と寝そべって空を見上げていると、色々な鳥が空を舞っていた。悠々と高空を滑空する鷹、その近くを急旋回して飛び去る隼、それより下には ピーヒョロロロと鳴きながら気持ちよく空を舞うトンビなどの猛禽類が生息していた。さすがに鷲は見かけなかったが。
 麦畑の中には雲雀(ひばり)が巣作りをしており、その特徴ある動作を観察すると飽きることはなかった。先ず空中から急降下し、麦畑に入ると真横にかなりの距離を移動して巣に入るという念の入れようで、これは弱い鳥の防衛本能のなせる業だと思う。一度巣を見つけて中を見ると丁度ウズラの卵のような小さな卵が小枝で囲った巣の中に納まっているのを見た。我々子どもたちも自然のルールを守り、それを持ちかえるようなことはしなかった。戦中育ちは意外としつけは厳しかったもので、弱い者いじめはしない。小さい子は守るという不文律ができていた。
 当時子どもたちの間では「ホンチ:剣をもつクモ(蜘蛛)の一種)」を戦わせる遊びが流行っていた。通常家の生垣としてどこにでもあるマサキ(柾)に生息しており、マサキの若芽の周囲を探し回って捕まえたのを覚えている。捕まえたホンチはマッチ箱に入れ、小学校に持って行き、休み時間に同級生同士でそれぞれのホンチを戦わせ興奮したものである。大人が闘牛や、闘犬、闘鶏に興づるのと変わりないと思うが、こうしたクモを使った殺し合いの遊びは諸外国には例がないということである。
 本当に闘争心の強いクモでマサキの垣根の合間で戦っている姿も何回もみた。友達同士の話では薔薇の木に生息するホンチが最強ということで、雑木林の入り口にある薔薇の藪をつついて探したがこれは捕まえることはできなかった。このホンチはバラケン(剣)と呼ばれ珍重されていた。
 なお、マサキの中で見かける同じようなクモで剣を持たないクモはババと呼ばれたが、これはマサキだけでなくどこにでも生息するようで、現在の我が家にも毎年のように壁を這っているのをみかける。ゴキブリの卵などを捕食する益虫なので、我が家では好きなように徘徊させていたる。今年はゴキブリが出て大騒ぎをしたところをみると、ババ不在の年なのかも知れない。
 次回は萱畑と雑木林の遊びについて思い出をつづることにする。




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