日常細事2018


kiji



2019.8.14 祭りと縁日(3)
 縁日に出店する屋台は非常に種類が多い。今回は「お食事系の屋台」に目を向けて食欲をそそられることにしよう。
 今とは食生活が大きく違う昭8年-30年の記録を見ると「ゆで卵」「すいか」「バナナのたたき売り」などの屋台が出店しており、時代背景が色濃く出ている。香具師(やし)の口上は次の塙で紹介しようと考えているが、ここで「バナナのたたき売り」が出てきたので、その口上は我々同世代には懐かしいので、レコードを引っ張り出して、さわりのところを再現してみる。
『どうだいこれは、見るからにふさふさとした黄金色で、うまそうなバナナだね。おいおい坊や、そこでよだれを垂らしちゃいかん。このとおり見ただけでもよだれの出るほどにおいしいが、食べたらなおのことおいしい。ほっぺたのおちること請け合いだ。もっともほっぺたが落っこちたからといって、わしの方では治療代は払わない事になっているよ。あとで苦情が来るといけないから、これだけはハッキリことわっておくよ。ソレ。お客さん、バナナはね、そうやって見とれているだけの物じゃないよ。買って帰って食べるものだよ。・・・』とまあこういった具合で、こうした口上に乗せられてつい手が出てしまうのである。ベテランの口上は真打の落語家並みの口舌であったと言う。
 話を戻して今でも露店として見ることができる屋台はと言うと「焼きそば」「お好み焼き」「たこ焼き」「イカ焼き」「じゃがバター」などが軒を連ね、互いの店の味を競い合う。当然のことだが、うまい店には行列ができ、評判がイマイチの店には閑古鳥が鳴く。という光景が展開する。矢張り最近は、上に示したような売り口上は聞かれないので、味が勝負で全般的に縁日のデモンストレーションが影を潜めているのは寂しい限りである。
 タコ焼きやお好み焼きは、テキ屋の隠語で「コナモノ」と呼ばれるそうで、縁日屋台の初心者は、まず「お面」や「おもちゃ」を売る「ウリモノ」を経験してから、次に難しい「コナモノ」を手がけるという段階を踏んで顔をお広げていく仕組みになっている。
 次回は縁日を仕切る「香具師」とか「的屋(テキ屋)」の商売の仕組みを探って見ることにする。



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