2020.4.22 お役所仕事
稟議書(りんぎしょ)というものがあることを知っているだろうか。稟議は役所などで起案された書類が多くの人の閲覧を経て決済に至る手順を形に残す仕組。ハンコ行政と言われる実態を示している。
一つの物事を決めるのにどれだけ手間暇がかかるのか想像に難くない。この手続きは一般的にはボトムアップの形を示しており、トップダウンと言って「鶴の一声」即決するケースもたまにある。
今回の新型コロナウィルス騒動で、対応が後手後手になっているという批判が多く出ている。その背景には、こうした「お役所仕事」が大きく関連している。普段は「お役所だから仕方ないか」と見逃している傾向が高いのだが。
ところが今回のように緊急事態ではそうはいかない。極言すれば、「一か八かの勝負」に出る必要もあるのだ。これは官僚を含めお役所では先ず絶対にできない。総理大臣を中心に政府が強力な指導力を発揮しないと、ことは進まない。
たとえそうなって意思決定(上意下達)がなされても、それが各省庁そして自治体というお役所に伝達されると、そこでは多分あちこちで確認のハンコが押されることになる。役所の仕組みは一朝一夕に変わるものではない。こうしてまた時間が浪費されることになる。
これはだれも責任を取りたくないからだ。キャリアは一つの失敗で未来を失う。それでは首がいくつあっても足りないから、下の方にその責任を押し付けることになる。
どんなに緊急で人の命がかかっていようと何とか理由つけてなすべき行動を実行には移さない。だからすべてが後手後手に回ることになる。
感染者の検査には特に顕著にそれが表れている。どうも世界の様子を眺めているとしか思えない。100%完璧な検査方法などあるはずもない。それなのに躊躇している。もっとも今の日本の医療体制でこれ以上医療従事者に負担をかけるのは残酷ともいえよう。今はクラスターの処理で手一杯かもしれないのだから。
保健所もお役所の一部だし、いままで予算が削られ続けた結果もあり、機能不全になりつつある。ある意味ではじめて保健所が「陽の目を見た」のではないだろうか。
このようにしているうちに感染はどんどん広がっている。国民の不安は高まる。従来の制度ではすべての面で対応不足だから、これからどうなることやら、日本は今試練の場に立たされている。
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