日常細事2021pre


kiji

2021.9.10 諺集に見るわが人生(18)
 今回は諺集(新明解故事ことわざ辞典:三省堂)「あ行」の「い」から始めて、回顧していくことにする。
 今回の最初は「衣食足りて礼節を知る」で「人は生活が豊かになると、礼儀や節度をわきまえる余裕が出てくる」という意味の諺でこれは有名なので誰でも知っていると思う。私の子供時代は大戦直後であったので、生きるのにせい一杯で、なりふり構わずの生活が続いていた。その時代と今を比べて礼節がどうなったかというと、飽食時代の今の方が「礼節」は知られていないようだ。自己中心の風潮のなせる業であろう。
 「以心伝心(いしんでんしん)」言葉によらずに、互いの心から心に伝えること。言語では説明できない深遠・微妙な事柄を相手の心に伝えてわからせること。いかにも仏教から生まれた諺のような響きがあるが、その通りで「もとは禅宗で、ことばや文字で表せない仏法の神髄で、師から弟子の心へ伝えることを意味した」という補説がついている。実際には言葉や文字がなければ自分の意思を伝えるのは難しく、私などは修行が足りないせいか言葉ですらうまく伝えられず「しまった」と思うことがしばしばある。
 このように相互に齟齬(そご)が生ずるケースに合う諺に「鶍(いすか)の嘴(はし)」がある。この意味は「物事が食い違って、思うようにならないことのたとえ。鶍のくちばしは上と下とが交差していることから」実際こんな難しい漢字の諺は多くの人が知らないはずで、私は鶍という鳥など見たこともない。それでもこのたとえは的を射ている。
 「痛し痒し」利害が混在して、どちらかを選ぶのに迷うこと。搔けば痛いし掻かなければ痒いという意から。どちらを取っても自分に都合の悪い結果になる時に用いる。原本ではこう説明しているが、とすると利害の利は元々選択肢に無いのかなと思ってしまう。
 マイナス思考よりプラス思考でとらえて「選択が正しく効果を上げた」ということになる「使い方」も語法として「あり」かもと探してみると「あった」。コトバンクを見ると「痛(いた)し痒(かゆ)し」《かけば痛いし、かかないとかゆい意から》二つの方法のどちらをとってもぐあいが悪く、どうしたらよいか迷う。また、ぐあいのよい面もあれば悪い面もあって、困る。という記述もある。どちらか正解か選ぶのも「痛し痒し」か。
次回に続く。




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