kiji

2014.8.24 秋残照
 夕方近くに散歩に出た。外はまだ暑く、珍しく雲一つない快晴で、襟元を掠める風が心地良い。西日が真横から強く差し込み、木々の陰影が際立つ。建物は西日を浴びて黄ばんで見える。
 公園に入ると夕日が射さない場所なので、薄暗く感じる。この公園は桐の大木があることで知られている。桐の大きな葉は虫食いだらけで、枝には大きな実がたわわに実っている。もう直ぐ落葉の時期を迎える。「桐一葉落ちて天下の秋を知る」とは、桐の紋章の豊臣家が滅びるのを予言した片桐且元の言葉。桐は樹木の中で、秋に最も早く葉を落とすのだそうだ。
 木々の葉に囲まれた公園は、蝉の声が相変わらず騒々しい。その中にツクツクボウシの鳴き声が混じる。矢張り本格的秋が間近に迫っている様子だ。桐の葉が散ろうというのに街路樹の銀杏(いちょう)や楓の葉は、装いも真新しくまだ小さく青々としている。落葉樹の変化は日に日に色や形を変え、季節に合わせた自然の営みを知らせてくれる。
 帰り道日が傾く中、稲穂に似たススキが白っぽい羽毛に包まれて芽吹き始めたのに気が付いた。十五夜の月見を飾るススキの出番はまだこれからだ。
 「秋は夕暮れ」(前掲7月27日緑萌え立つを受けて)という言葉が、やっと実感として伝わる夕べの散歩道ではあった。


 
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