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解体のあとさき



  巨大な爪がコンクリートの壁を突き崩し、中の鉄筋が剥き出しになる。まるで肉体が切り刻まれ骨が飛び出しているようなおぞましい姿を人前に晒している。
 隣には真新しい白くて清潔感のある建物が建っている。そこにかつての古びて汚れて、客も敬遠する姿があったことは想像できない。
 今解体中の建物は古くて老朽化した別館である。ガツン、ガラガラという轟音を響かせ重機が巨大な腕を揮うたびに発する音は、失われた魂たちの叫びにも似た苦悶の響きを放つ。
 人も建物も終わりを迎え、建物は解体され再生され、新しい美しい姿に生まれ変わる。
 彷徨える魂はどこに行くのだろう。それともここで失われた魂は、既に安住の地で安らかな眠りについているのかうかがい知る術はない。
 巨大な重機が二台、お構いなしにその腕を振り続けている。ガツン、ガラガラという音が響く中、白いビニールシートで覆われた解体現場は、むき出しの鉄筋の棘はその姿を低くし、やがて見えなくなり、そして土に帰る日も間近だ。
 その新しい地面の上には直ぐに白くて清潔感の漂うツインの病棟が姿を現し、身体の再生を求める多くの人で待合室が埋まることだろう。 
 破壊と創造、生と死、輪廻転生を繰り返すのは人の世のみならず、形あるものの宿命なのか。
 

 



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