生物百様で紹介してきた花や果実のイラストをダイジェスト版として、1回12枚構成で順次解説を付けて紹介するシリーズで、今回は3回目。植物図鑑類を参照して作成した。
リンドウ(竜胆)Gentiana
リンドウ科リンドウ属の多年生植物である。本州から四国・九州の湿った野山に自生する。花期は秋。花は晴天の時だけ開き、釣り鐘型のきれいな青紫色で、茎の先に上向きにいくつも咲かせる。高さは50cmほど。葉は細長く、対生につく。竜胆や嶺にあつまる岩の尾根 水原秋櫻子
ガーベラ Gerbera
キク科ガーベラ属の総称。多年草。ヨーロッパで品種改良され、切花や鉢植用に栽培されるものが多くある。こうしたものは花期は4–9月頃、暖地ならば4-11月頃。ガーベラの炎のごとし海を見たし 加藤秋邨
ツユクサ(露草)Commelina
ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。晩夏から初秋にかけて藍色の爽やかな花をつける。露草も露のちからの花ひらく 飯田龍太
シクラメン Cyclamen
サクラソウ科シクラメン属に属する地中海地方が原産の多年草の球根植物の総称である。ハート形をした柄の長い葉には白斑があり、花茎を伸ばし花をつける。また、葉芽と花芽は一対一で発生して行く。日本においては秋から春にかけて花が咲く。一重や八重、花の色は白や赤・黄・桃色などと多様性に富んでいる。シクラメン花のうれひを葉にわかち 久保田万太郎
ネリネ Nerine
ヒガンバナ科ネリネ属。球根は直径3-5cm。冬の終わりから春にかけて紐の形をした長さ約20cm、太さ約1cmの鋭い葉が2枚現れる。葉は晩春に枯れ、球根も晩夏に休眠状態に入る。秋には長さ約30cmの茎から2-12輪の直径約4cmの漏斗状の花が咲く。冬花壇ネリネばかりの艶やかさ 愚兀
コスモス(秋桜)Cosmos
キク科コスモス属。秋に桃色・白・赤などの花を咲かせる。花は本来一重咲きだが、舌状花が丸まったものや八重咲きなどの品種が作り出されている。 青空に手あげてきるや秋桜 五十崎古郷
サザンカ(山茶花)Camellia sasanqua
ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹。童謡『たきび』の歌詞に登場することでもよく知られる。秋の終わりから、冬にかけての寒い時期に、花を咲かせる。植栽される園芸品種の花の色は、赤色や白色やピンクなど様々である。 山茶花の長き盛りのはじまりぬ 富安風生
ヒイラギ(柊)Osmanthus
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木である。樹高は4-8m。葉は対生し、革質で光沢があり、その形は楕円形から卵状長楕円形をしている。その縁には先が鋭い刺となった鋭鋸歯がある。 柊の花見返れば少女佇つ 佐久間東城
カンツバキ(寒椿)Camellia
サザンカとツバキの交雑種と言われるツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑中低木。一般的には淡い紅色の八重咲きが多いが、白や桃色のものもある。
花には仄かな香りがある。火の気なき家つんとして冬椿 一茶
キョウチクトウ(夾竹桃)Nerium
キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。和名は、葉がタケに似ていること、花がモモに似ていることから。花は、およそ6月より残暑の頃である9月まで開花する。夾竹桃一枝折りて咲きゐたり 徳川夢声
カトレア Cattleya
ラン科カトレア属。非常に大輪で派手な美しい花を咲かせることからよく栽培され、ランの中でも最も有名な洋ランである。洋ランの女王とも言われる。カトレアを見初めし如く佇みぬ 読み人知らず
マンリョウ(万両)Ardisia crenata
サクラソウ科(またはヤブコウジ科)ヤブコウジ属の常緑小低木。林内に生育し、冬に熟す果実が美しいので栽培され、特に名前がめでたいのでセンリョウ(千両)などとともに正月の縁起物とされる。実万両ひとつひとつに雨の粒 岡田佳世子