改訂版 花果特選その四 スライドショウでご覧ください
生物百様で紹介してきた花や果実のイラストをダイジェスト版として、１回12枚構成で順次解説を付けて紹介するシリーズで、今回は4回目。植物図鑑類を参照して作成した。なお、英文は英文名を記載した(学名とは別物)。
クロッカス Crocus
アヤメ科クロッカス属の総称。晩秋に咲き、花を薬用やスパイスとして用いるサフランに対し、クロッカスは早春に咲き、観賞用のみに栽培されるため、春サフラン、花サフランなどと呼ばれる。花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。
日が射してもうクロッカス咲く時分 高野素十
クモマグサ（雲間草) Irish saxifrage
ユキノシタ科ユキノシタ属の耐寒性多年草である。日本の本州中部の北アルプスの白馬岳と御嶽山のみに分布する。草丈は2-10 cm程度で花は直径1.3 cmほど。花弁の基部が急に細くなるところが特徴と言える。開花時期は7-8月。
夏の暁け目覚め早きや雲間草 百茶庵
フリージア Freesia
アヤメ科フリージア属・半耐寒性球根植物の種のひとつ。白・黄色・紅・ピンク・赤紫・藤色・オレンジ色などの6弁花を6 - 12輪くらい咲かせる。白・黄色は切り花に多く用いられる。
喜びをそっと秘めおきフリージア 木津二郎
ハボタン（葉牡丹 )Ornamental cabbage
アブラナ科アブラナ属の多年草。園芸植物として鮮やかな葉を鑑賞するが、観葉植物より一年草の草花として扱われる事が多い。主に冬期の花壇やプランターなどで、屋外栽培される。花は黄色で4-5月に開花する。
葉牡丹にうすき日さして来ては消え 久保田万太郎
ツユクサ（露草)Asiatic dayflower
朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名の Dayflower も「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。
露草も露のちからの花ひらく 飯田龍太
ジンチョウゲ（沈丁花）Winter Daphne
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。チンチョウゲとも言われる。2月末ないし3月に花を咲かせることから、春の季語としてよく歌われる。つぼみは濃紅色であるが、開いた花は淡紅色でおしべは黄色、強い芳香を放つ。
沈丁の匂ふくらがりばかりかな 石原八束
アセビ（馬酔木)Pieris japonica
ツツジ科アセビ属の常緑低木。日本に自生し、観賞用に植栽もされる。別名あしび、あせぼ。馬酔木の名は、「馬」が葉を食べれば毒に当たり、「酔」うが如くにふらつくようになる「木」という所から付いた名前であるとされる。早春になると枝先に10cmほどの複総状の花序を垂らし、多くの白くつぼ状の花をつける。
来し方や馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋櫻子
ツルニチニチソウ（蔓日々草)bigleaf periwinkle
キョウチクトウ科ツルニチニチソウ属の常緑蔓性植物の一種。花期は、春～初夏。花の形がニチニチソウに似ているが、色は青紫色。柱頭は円盤状をしており、その上に毛のある突起物がある。このような柱頭の植物は珍しい。葉は幅広い。ニチニチソウ同様に繁殖力が非常に強く、やはり観賞用によく栽培される。
こっそりとニチニチソウが咲く歩道 詠み人知らず
ハナミズキ（花水木)Flowering dogwood
ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。花期は4月下旬から5月上旬で、白色や薄いピンク色の花をつける。但し、花弁のように見えるのは総苞で、中心の塊が花序である。実際の花は、4弁の直径5mm程度の目立たない花が集合して、順次開花する。
みちのくのたのしき友よ花水木 角川源義
カリン（花梨) Chinese quince
バラ科カリン属の落葉高木である。花期は3月〜5月頃で、5枚の花弁からなる白やピンク色の花を咲かせる。花・果実とも楽しめ、さらに樹皮・新緑・紅葉が非常に美しいため家庭果樹として最適である。
くわりんの実見あげ去年のこと遠し 山口青邨
ビオラ Viola
スミレ科スミレ属のラテン語名である。ビオラは園芸によく用いられ、観賞用に販売されている。パンジーとの定義の区別はかなり曖昧であるが、花径5cm以上をパンジー、4cm以下をヴィオラとすることが多い。
日の中のヴィオラの前を乳母車 詠み人知らず
バラ（薔薇）Rose
バラ科バラ属の総称である。バラ属の成形は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘を持つものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ（ただし、園芸種では大部分が八重咲きである）。
咲き満ちて雨夜も薔薇のひかりあり 水原秋櫻子