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数え方いろいろ

 

1.数え方「今昔
 諺や、故事などを見ると、今は使われていない数の表記を結構見かける。
 例えば「アルプス一万尺」などという表現がある。これは高さを表すものだが、現在の計量法では3030mとメートル法で書かなければならない。尺という表記は「度量衡」という数え方の昔の取り決めで、この内の「度」には尺などの長さや距離を示すものや、坪や町・丁歩といった地面の面積などの広さを示す単位が定められていた。
 店の軒先に絵馬のような木札に升を半分に仕切った絵が描かれているのを見た覚えがある人がいると思う。これの意味するところは、一升の半分は五合であるが、半升=はんじょう=繁盛に結び付けているのである。もっとすごいのは色紙などに「春夏冬二升五合」という文字を書いて、店の壁に貼り付けてある。これは秋が抜けているので、商い(秋ない)益々(升×2)繁盛(1升の半分5合)と読ませている。こうなると判じ物で、今の若い人にはさっぱり通じないだろう。このように升を基本にした体積・容積の単位を「量」で定めていた。
悪い表現で恐縮だが「百貫デブ」という言葉がある。これはすごい体重のある人の例えだが、このように質量を表す基本単位は貫と表記された。これが「衡」と呼ばれる取り決めであった。
 書いていて気が付いたが、貫とか衡という文字はパソコンでの出方が非常に下位になっているのも、これらが半分忘れかけられている証でもあろう。
 とは言え、古い表記の数え方は随所で見つかる。真夜中の幽霊が出るような時間帯を「丑三つ時」といったり「一寸の虫にも五分の魂」とか「早起きは三文の徳」「舌先三寸」等々数え上げると結構出てくるものだ。こういう数字を見ると何か懐かしさを覚えるのも、これの表現が古い文献にしか見られないという時代の流れなのかもしれない。 「一寸の光陰軽んずべからず」などは残ってほしい故事のひとつだ。
 度量衡法は1952年(昭和27年)3月1日計量法の施行により全廃された。計量法もその後改正があり、現在は1992年(平成4年)に制定されたものである。これらの改正の経緯は国際標準に合わせるところにあるようで、欧米標準なので、メートルやグラムでは、たとえ話も諺も作り難いのは確かだ。2017.3.7 

2.数え方「品物名数抄」
 度量衡法(計量法制定以前の数え方)のところでも触れたが、物の数え方はまさに千変万化できりがないほどある。
 物の数え方(本・人・個・枚・匹・頭・羽など)は助数詞というが、ホームページ 「みんなの知識 ちょっと便利帳」の中で紹介されている「ものの数え方」では6000例も上げている(http://www.benricho.org/kazu/)。
 イントロとして、この中のコラムから数え方の歴史を感じさせるものをピックアップして紹介する。
 これは国会図書館デジタルコレクションのうちの一つ「国漢新辞典(明治44年刊行)」で紹介されているものの中から選んでみた。余談だが明治44年刊行の辞典に「新」が付いているのは笑える。
 この辞典のおそらく附則の部分だと思うが「品物名数抄」というのがある。そこを見ると文具類、玩具類、佩用(はいよう)類、武具類などと辞典らしく、確り分類されている。原版をコピーしたものが掲載されていたが、傷んでいるため判読しにくい文字が多かった。
「文具類」筆:一管、一本。墨:一丁、一挺。机:一脚、一前。(*読経の際に経文を載せる経机などの数え方)。紙:一枚、一葉、一張。書籍:一巻、一冊、一部。
「玩具類」笛:一管。鼓:一丁、一張。碁盤:一面。
「佩用類」扇:一本、一枚、一把、一握、一柄。
「帛服籍(はくふくせき)物類:着衣」帯:一本、一筋、一条(*條のようにみえる)。袴:領、下、揃。足袋:一足、一双。風呂敷:一条。(*一枚や一包の表記はない)
大雑把に例示したが、すっと思い浮かぶのがあまりに少ないのには驚いた。次回はもう少し勉強して今風の数え方に言及してみたい。(*は脚注)2017.3.14 

3.数え方「時間」
「ひとーつ、ふたーつ、みーつ」という風に数を数えた覚えのある人は多いと思う。私の場合、腰の養生のため、座り仕事の合間に体操をする。一回大体10秒であるが、その時頭のなかで時計代わりにこうした数字の数え方をする。「ひとつ、ふたつ、みっつ」では早過ぎる。「ー」を入れて数えると丁度1秒間隔になる。10数えると10秒になる。
 子どもの頃隠れんぼなどする時、鬼になった子は30数える間、目をつぶっていなければならないというルールがあり、これはできるだけ早く30まで数えなければならないから「だるまさんころんだ」を3回大きな声で叫んで、目を開けた思い出がある。これは数字の代わりに10個の文字を並べたもので、こんな数え方もあるということだ。
 時は秒・分・時・日・月・年・世紀などと言った単位に分けることができる。このように今日では時間の数え方をこのように表しているが、江戸時代では全く違う数え方をしていた。
 一刻千金という四字熟語にもあるように、江戸時代は「辰刻法(しんこくほう)」という時刻の表し方があった。これは十二辰刻とも呼ばれ、1日を12に分けたそれぞれ(1刻)がおよそ2時間になり、1時間は半刻と呼んだ。各時辰の始まりは初刻といい、中間を正刻と呼んだ。1日の始まりの0時は、十二支の第1である子の正刻となる。1日を12等分したため同じ呼び名の時刻がくるため、区別するため夜九つ、昼九つなどと分けて呼んだ。「おやつ」の語源は昼八つで丁度午後3時頃に当たる。江戸時代の生活は日の出に始まり、日暮れに終わるの繰り返しであった。朝晩に聞こえる鐘の音は「明六つ(日の出正刻6時)」と「暮六つ(日の入正刻18時」の鐘と呼び、これが朝晩の基準として昼夜はそれぞれ6等分された。これを不定時法という。
 都(みやこ)があった江戸の町では、めざましい発展に伴い、武家・寺社・町方に共通の時刻制度を報じる手段が求められ、幕府管轄の下、最初に設置されたのは本石町(現在は日本橋小伝馬町)の鐘で、順次江戸城を囲む ①本石町②上野寛永寺③市ヶ谷八幡④赤坂田町成瀬寺⑤芝増上寺⑥目白不動尊⑦浅草寺⑧本所横堀⑨四谷天龍寺と9か所に設置された。松尾芭蕉は「花の雲、鐘は上野か浅草か」という歌を詠んでいる。
 このようにして「時の鐘」は、江戸に暮らす庶民の生活のリズムを刻む鐘として、日本人に勤勉さを植え付ける礎(いしずえ)となったと言われている 。2017.3.17 

4.数え方「ペーパー」
 最後に家の中にある紙類(書籍・ダンボールを含む)について考察してみた。
 日常使う紙類で最初に思いつくのがトイレットペーパーで誰でも一日に数回はお世話になるはずだ。この数え方はその形態や数により数え方も変わってくる。通常は円筒形に巻かれた状態にあるので1ロールと呼んだり、1個ないしは1本(ロールの芯の部分)と呼ぶ。スーパーなどでまとめ買いする時は12ロールで1パックと呼ぶ。昔はちり紙を使ったので、この場合は1枚単位で数え、まとめて入っていれば1箱という。これはティッシュペーパーも同様である。
 私は手紙は筆書きで和紙を使うことにしている。書道などで使う和紙は半紙と言うが、なぜ1枚でも半紙なのかという謎々みたいなルーツは「 昔の手漉和紙(てすきわし)の基準寸法[1尺6寸×1尺1寸]を半分〔8寸×1尺1寸=24.24×33.33cm 〕に裁断したものを使用したので半紙と呼ばれた(インターネット調べ)」ということだ。この数え方は、習字を習っている人なら耳にしているだろうが、多少特殊な数え方をする。1枚に始まり、20枚セットで1帖といい、10帖で1束(そく)、100帖でひと締めと数える。
 プリンタなどで使う普通紙は1枚から始まり、某文具メーカーのホームページによれば1冊(500枚入) 、1セット(1500枚:500枚入×3冊)、1箱(5000枚:500枚入×10冊)という数の単位で呼び分けをしている。紙の数え方は和紙の場合ははっきりしているようだが、普通紙の場合は和紙のそれと混同した数え方がされており、明確な基準はないようだ。
 本の数え方は数え方の事典(小学館)によれば「冊」は書籍・本の数え方 。「点」は作品や商品としての数え方。「部」は発行部数や売上部数の数え方。「巻」はシリーズ本や続き物の本、百科事典などの数え方。などに分類している。
 段ボールの数え方は折りたたんだ状態では「枚」で数え。箱の形にすると「箱」という数え方に変わる。
 このように4回にわたって数え方のいろいろを紹介してきたが、先程参考にした「数え方の事典:小学館」のように多くの事典・辞典が刊行されているぐらいなので、数え上げるとキリがない。ひとまずこれをもって終わることにする。2017.3.21 





 



 


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