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 老いて思う(はじめに)


 人生80年時代と長寿社会に入っているが、私もあと2年でその年令に達する。そこで死ぬための覚悟をしっかり持つように精神を固める時期となった。
 2014年の「書く」の中で「老いて後の記」というエッセイを書いたが、これは、貝原益軒の人生訓に学ぶところが多かった。その時『何れ「老後の哲学」(その2)として掲載したいと考えている』と続編を考えていた。ここに掲載することになった続編は「老いて思う」として執筆することになった。
 貝原益軒の「楽訓」は老後の生き方の指針であるが、どちらかと言うと健康年齢にあるときの生き方を示したもので、死に直面したときの心得というか哲学には「他の道」があるように感じ、模索してきた。
 その結果、己の人生哲学の最終章に当たるものとして、かねてより「禅の思想」を追求してきた。これは曹洞宗の始祖道元禅師の言葉の中にある。その糸口は「身心脱落(しんじんだつらく)脱落身心」という言葉で、この解釈は次章で詳しく解説するが、こうした生きること、死することへの心得のような言葉が、一つの指針となり、更に学ぶべき道の遠さと深さを感じさせる。
 上記の言葉を集めた道元の書「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」は極めて難解な書である。道元思想を示した 多くの解説書など集め理解に努めてきたが、未だ身をもって理解するには至っていない。それでも、先に示したような何がしかのキーワードは見つかった。
 とりあえずの作業として、自らの心の琴線に触れた跋文を紹介し、現代訳を付して、次に自分の人生哲学の骨組みとする作業に入りたいと考えている。
 これから始めることは、序章に過ぎず、時間のかかる課題だけに、どのように表現していくか。どれだけ理解していけるのか未知数の部分が多く、公開するに躊躇いを覚える。
 このことは「老いてなお挑戦する」という心意気であり、この試みが自分の生あるうちに完成を見るという保証はどこにもない。問い続ける中で禅の「悟り」に近い境地を見いだせれば、これに越したことはない。
参考文献
①道元 鏡島元隆「正法眼蔵、永平公録」(講談社 禅入門2)
②道元の思想、道元:自己・時間・世界はどのように成立するか 頼住光子(NHK BOOKS)
③正法眼蔵・永平公録用語辞典(大法論閣)
④道元禅師の言葉 公方俊良(主婦の友社)
⑤悟りの構造・正法眼蔵の解明 中山正和(産業能率大学)
⑥禅の心 竹村牧男(ちくま学芸文庫)
⑦禅語百選 松原泰道(祥伝社)
⑧禅語録 世界の名著18(中央公論社)
⑨夢中問答 夢窓国師(岩波文庫)
⑩禅学入門 鈴木大輔(講談社)



 


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