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日本昔話(第二十一話)瘤二つ


 むかしむかし目の上に大きな瘤のあるお坊さんがおりました。諸国を修行してある山家(やまが)の村で泊めてくれる家がないので、仕方なしに古い辻堂( 路傍にある小さい仏堂)に入って一夜を明かしました。夜もすでに三更( 現在の午後十一時ごろから午前一時ごろにあたる)の頃おいに、多くの人の足音がして、このお堂に入ってくる者たちがいました。よく見るとそれは天狗さんで、ここに集まって酒盛りをするのでした。とても夜通し隠れているわけにも行かないので、怖かったけれど、時間を見計らって、自分も円座という藁の敷物を尻に当てて、飛び出して一緒に踊りました。明け方に天狗は帰ろうとして、「おまえは面白い坊主だからこの次もまた来てくれ。しかし約束をしても嘘をつくといかんからこれを質に取って置く」と言って、目の上の瘤をむしり取って持って行ってしまいました。お坊さんはうるさいと想う瘤を取られて、大喜びで故郷に帰ってきました。
 ところがその近所に又一人、同じところに瘤があって困っている坊さんがいました。この評判を聞いて羨ましくてたまりません。くわしくその人の話しを聞いておいて。わざわざ瘤を取られに、その辻堂まで出かけていきました。案の定夜ふけに天狗が集まって酒盛りを始めました。そこで坊さんは急いで円座を腰にくくりつけて、踊りだしてみますと、天狗たちは大変喜んで「おお坊主、よく約束をまちがえずにまた来てくれたな、おおきにご苦労であった。それでは質に取っておいた瘤を返すぞ」と言って、何か顔に打ち付けられたように思いますと、もう目の上のたん瘤が二つになっていました。
 そうして余計な人真似はしない方がよかったと、いつまでも後悔していたそうです。(2017.8.18)




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