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 第4話 猿と猫と鼠


 昔々ある所に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お婆さんは精を出して木綿を織ると、それをお爺さんが風呂敷に包んで、方々の町で売り歩いていました。ある日のこと、お爺さんは商いに出かけて、一人で山道を帰ってくると、はるか向こうの山の樹に大きな雌猿がいるのを、猟師が鉄砲を持って撃とうとしていました。雌猿は手を合わせて「殺さないでください」という様子で拝んでいました。お爺さんは可哀想なことをすると思って留めに行きますと、思わず鉄砲がそれて、お爺さんは肩先を撃たれました。猟師は飛んだことをしてしまったと逃げていきました。そうするとどこからともなく多くの小猿が現れて、一生懸命に介抱をしてくれました。そうして猿の家に連れて行って、大層なご馳走をしたそうです。お婆さんが心配しているからもう帰ると言いますと、猿たちがお礼に宝物をくれました。そしてこう申しました「これは猿の一文銭といって、世にも大切な宝物ですが、命を救ってくれたお礼に差し上げます。これを祀っておくと金持ちになります」
 本当にお猿が言った通りでした。家ではお婆さんが年の暮れだというのに、木綿も売らずにお爺さんが帰ってきたので、さんざん怒りましたが、猿の一文銭のお蔭で、僅かな間に金持ちになりました。ところが近所に悪い人がいて、急に爺婆が金持ちになったわけを聞いて、知らない間にその宝物を盗んでしまいました。
 お爺さんとお婆さんはびっくりして、方々探して回りましたが、どうしても在りかが知れません。そこで家に飼っているタマという名の猫を呼んで「タマよ、猿の一文銭を三日の内に探し出してきなさい。探し出してくれたらご褒美を上げる。探し出さなければこれだ」と言って光る短刀を抜いて見せました。猫のタマはこれを聞いてすぐに飛び出して、一匹の鼠をつかまえて言って聞かせました「鼠よ、うちのお爺さんの宝物がなくなった。三日の内に見つけて来い。見つけてくるならば助けてやる。もし見つけないと尻尾まで食べてしまうぞ」と言いました。鼠は食べられては大変だから、三日の間近所の家々をまわって猿の一文銭を探しました。そうして遂に隣の悪い人の家の箪笥の中にあるのを見つけて、引き出しをかじってそれを取り出し、持ってきてタマに渡しました。タマは喜んで、それをくわえてお爺さんに渡しました。お爺さんもお婆さんも猫のタマも鼠も共々に大喜びで、皆が皆いつまでも繁盛したということです。めでたし、めでたし。(因幡地方)


 


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