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 年寄りの暇つぶし(4) 

 
 京都のモデルケースKSUVが退職後のシニア世代に対して、どのようにして生き甲斐と働く意欲を与えるような活動をしているか、その実績と効果。課題などを探ってみる。
 KSVUは企業を退職したOBで構成する9団体の連合体であるが、それぞれが得意とする分野を持っている。例えば写真や美術など、様々なテーマごとにクラブが組織されており、退職後の社会貢献活動や企業の支援活動等に興味・意欲を持った人が集まっている。
 ものづくりの街であるので、ものづくりに関わる企業が多く、各団体の会員には企画、生産・製造、販売、物流、総務などものづくりに関わる多様な分野のエキスパートが多くいるというのも特色としてあげられる。そうした人材が多く輩出している要因として、会員の多くが、それぞれ地元大手企業の創業時からの成長・発展を支えた世代であり、幅広い業務に携わっていたことから、高い専門的なスキルを持っているだけでなく、ベンチャー企業が創生期に要求される多分野に亘る知識も備えているからである。こうしたスキルを持った人材が多くそろっているため、多種多様な要求のある中小企業への支援ができるのである。
 経済産業省では、平成15年度から「企業等OB人材活用推進事業」をスタートさせている。KSVUにおいてもこの事業の一環として、平成17年度から会員を派遣するマッチング事業に参画しているが、こうした支援が企業側の負担にならないよう、依頼・相談を受けた中小企業に対しては国等の支援制度の活用を勧めて、 なるべく経営が逼迫しないように配慮しているということである。受け入れる会社側にとってもそのメリットが受けられないのでは意味がないからである。
 KSVUでは、市内のみならず東日本大震災により東北地方のものづくり産業等が大きな打撃を受けたことを深く受け止め、京都市及びASTEMと連携して、被災地域を視察してその現状を把握するとともに、被災地域のものづくり産業の復興に向けた支援を行っている。具体的な活動としては、 KSVU が被災した企業のニーズを把握し、 それを基に京都市全体での支援体制を構築したり、 被災企業の販路拡大を図るための商談会を開催したりするものである。
 京都市教育委員会では、平成21年2月に子どもたちの体験学習施設として「京都モノづくりの殿堂・工房」を開設した。産学協同の活動をKSVUが支援するもので、京都市内17社のものづくりの技術を紹介するとともに、 日本のものづくりを支えてきた各社の創業者や技術者などの生き方や、ものづくりに対する情熱に触れることができるよう、 パネルや製品等の展示を行っており、主に小学校児童を対象に体験学習活動の場として活用されている。平成22年からは産学官民が連携して「京都モノづくりの殿堂・工房学習を育む会」が設立され、KSVU が同会の事務局として会の運営を支えている。
 報告書では「こうしたシニア世代の活動が、実際にものづくりに携わってきた企業OBが『京(みやこ)モノレンジャー』として一生懸命教えることにより、小学生にも真剣に取り組む姿勢がみられ、充実した体験学習となっている。学習活動後に、 自分たちの勤めていた企業や作っている製品に子どもたちが興味を持ち『すごい会社だ』、 『大きくなったら働きたい』といった声を直接聞くことにより、各OB人材も教えがいを感じることができるため、シニア世代のやりがいや充実感の醸成につながっている」としている。
 このモデルを見ると、世代間の交流を通じて「モノづくりの街」の存続への啓発活動は、シニア世代(65歳~75歳)に生き甲斐を生んでいることは明らかである。
 ここで紹介したのは先進事例であって、私の周囲を見回たした限りでは、スキルを生かして生き甲斐を得ているという話はあまり聞かない。ここで紹介したようにするには、産官学を取り込んだ、NPOなどの組織化が広まることが必須であり、元気なシニア世代が活動の場を得て生き生きと暮らしていける社会の到来に期待して、このレポートを終わる。(2017.7.11)

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