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 春よ来い


 寒いのは嫌いだ。身体がこわばって、散歩もままならない。家の中でうじうじしている。
 そこで待ちわびている陽春について、辞典を総動員して調べ上げてみた。
 まず「春」という字だが、字源(jigen1st)で示したような会意文字で、草の芽と太陽との出会いとの会意とある。時期的には3月から5月までを春とする。
 春の語源は、草木の芽が「張る(はる)」季節からとする説。
 田畑を墾る(土地を開墾することも、「はる」といった。『「はりま」という地名があるが、開墾された土地という意味である。開墾は、土地から余計なものを取り除いて、平らに開けた状態にすることをさした』季節から、「春」になったとする説。
 春は動詞の「晴る」だと推測して、古代の日本人にとっては、季節の巡り変りのうちで、冬が去って万物が晴れやかに開けるときを、「はる」とよんだのではないかとする説もある。
 漢字源では春をこのように説明している『もとになる字は「艸(そう)+日+屯(とん)の組み合わせ」た会意兼形声文字。これは「太陽」の象形(「日光」の意味)と「並び生えた草」の象形(「草」の意味)と「幼児が髪を束ねた」象形「多くのものを束ねる、群がる」の意味)から、草が日を受けて群がり生じる事を表し、そこから、季節の「はる」を意味する「春」という漢字が成り立った』

「漢詩」から春を愛でる詩を一つ紹介する。蘇軾(そしょく:蜀(四川省)眉州眉山(眉山市)の出身。中国北宋代の政治家、詩人、書家。)の「春夜」と題する詩である。
 春宵一刻値千金
 花有清香月有陰
 歌管楼台声寂寂
 鞦韆院落夜沈沈
(読み)
 春宵(しゅんしょう)一刻(いっこく)値千金
 花に清香あり月に影あり
 歌管 楼台 声寂寂(せきせき)
 鞦韆(しゅうせん)院落(いんらく)夜沈沈(よるちんちん)
(現代訳)
 春の夜は一刻千金のねうちがある。
 花はすがすがしい香りを放ち、月はおぼろにかすんでいる。
 歌や管絃で賑やかだった楼台も、静まりかえっている。
 ぶらんこのある中庭に夜はしんしんと更けていく。

 文化の相違もあるが、春の風情をよく伝えている詩である。

「俳句」から、日本の俳人も次のような春の句を詠んでいる。
 梅が香に のっと日の出る 山路かな 松尾芭蕉
(早春の山道を歩いていると、梅の香りにさそわれるかのように、太陽がのっという感じで顔を出した)

 梅一輪 一輪ほどの あたたかさ 服部嵐雪
(早春、庭の梅がぼつぼつ咲き始めて、その梅が一輪ずつ咲くごとに、気候も日に日にあたたかくなっていく)

 咲きみちて 庭盛り上がる 桜草 山口青邨
(桜草が、いっせいに咲いて、庭全体が盛り上がっているように見える。春まっさかりのすばらしいようすに感動している)

「童謡」には、相馬御風「春よ来い」がある。
 春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている
 春よ来い 早く来い
おうちのまえの 桃の木の
つぼみもみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている。
 このように書き連ねてくると、ますます本格的春が待ち遠しくなってくる。



 


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