町を歩いていて見かける光景だが、どこかしらで建築工事がが行われている。
空き地の中央に小柱に何やら神社や神棚で見かける白い紙がぶら下がっている光景を見ることが良くある。これは調べてみると、御幣(神祭用具の一つ。紙または布を切り、細長い木にはさんで垂らしたもの)で飾り付けた幣串(へいぐし)といって上棟式に使われる、いわば魔除けみたいな儀式の小道具である。
こうした慣習はいまだに残っており、短い弊串は、上棟式がおわると、棟に縛り付けて、上棟の記念とするのだそうだ。
大工さんは際に三隣亡の日には棟上げ式を行わない。これは仕事にかかる日の吉凶を暦で知り、凶日であるからだ。昔の大工さんの仕事は命がけであったのは、最近掲載した北斎の「江都駿河町三井見世略図」を見てわかるように実に危ない作業をこなしていたことからも読み取れる。
このように迷信・俗信と言われようと、先のレポートで示した大安や友引の類で、家の棟上げや結婚式の日取りを決める時は、六曜や選日などを見て決めるからだ。
暦の中には様々な吉凶の日があり、人々がそれを見て行動してきたのは、それなりの根拠があり、昔の人たちの生きていくうえで大切な生活の知恵だったのだろう。
このように暦とお日柄は密接な関係がある。この暦は旧暦によるもので、昔の暦は一冊の本になっていた。これには日付以外にもそれぞれの日付に注が記載されていた。これを暦注という。暦注は、その日が吉の日か凶の日か、何をしてはいけない日か、何をしていい日かを表すものである。一年の内のどの日にも、必ずといっていいほど、その日の吉凶を決める注意書きということになる。この本が日本の本のベストセラーであり続けたことは、生活していくうえで欠かせない存在であったと容易にくみ取れる。
ここで暦注の内容そのものに目を向けてみることにしよう。まず暦注の主役となった六曜について、その由来を調べてみた(現代こよみ読み解き事典:柏書房)。次回に続く