今年も害虫とくに蚊の季節がやってきた。かつて日常細事でも風物詩として取り上げたが(2013.8.29風物詩:蚊)、蚊の生態なども含めて改めて書き直してみた。
梅雨が明け、蚊の活動がにわかに活発になってきた。
私がもっとも嫌っているのに、相手は好んで寄ってくる。好きなことはなかなか上手いようにはいかないのに、招からざる客はいとも簡単に訪れる。世の中思うようには行かないものだ。血を吸うのはメスの蚊で、産卵のために動物の血を吸うのだという。それも女性の血より男性の血を吸うことが多いそうで、どうやら人間が発散する二酸化炭素が誘因となるらしい。その発汗率が男性の方が女性より高いのが、男が犠牲になる要因だとされている。よく血液型云々という説も聞かれるが、これは関係ないというのが定説だ。
いずれにせよ一匹の蚊の訪れで睡眠が妨げられる。この一匹を駆除しないと安心して眠ることもできない。最近は蚊除けのスプレーが出ているので、シュッと一吹きで蚊は襲ってこない。今では夏の夜に欠かせない生活グッズとなっている。
もっともこんなに強力だと、人にも良いはずはないだろうから、まず一刺し受けてから、噴霧することにしている。結局痒い思いをするのは避けられず、刺された箇所にはかゆみ止めを塗る始末である。
人間と蚊の関係は有史以来の付き合いで、古い文献にもよく出てくる。したがって、蚊対策の歴史も長い。蚊帳(かや)なども古い絵巻にも見ることができる。子どものころ夏になると和室に蚊帳を吊るのだが、部屋の四隅にフックをつけて、一種のテントように張る。素材は麻製で虫が入らない程度に荒く織られており、 ネットのように内から外が見えるようになっていた。これが子どもにとっては恰好な遊び場ができたようなもので、出たり入ったりして叱られたが、いい思い出となっている。今の時代では体験できない夏の風物詩だったのである。
最近年のせいか可聴音の幅が狭くなり、蚊が発する高音域の羽音が聞き取りにくくなり、アッチコッチ刺されても気が付かない。大体蚊は一回人の血を吸うと2倍くらい体が重くなり、動作が鈍くなるという。と同時にあのブーンという音も高くなり、人に気づかれてバシッと叩かれ、手の平に赤い血の跡を残し、一巻の御仕舞となるはずだった。ところが、その羽音が聞こえなくなってから、人間の方が攻撃されっぱなしで、滅多に撃墜することができなくなってしまった。
この夏も又、家の中でも、外に出かけるにしても、蚊に対する備えは欠かせない。