このシリーズ6回目は十二天(東西南北に北東、南東などの中間の方角を加えた八方それぞれの方角を守護する八神に、天地・日月の四神を加えた十二の神々のこと)を中心に10枚紹介する。
羅刹天 Rasetuten 十二天の南西の担当。古代インドでは悪魔の代表とされていた。性別があり、男性を羅刹娑(らくしゃさ)女性を羅刹私(らくしゃし)という。悪魔の類、無信心な類、夜間に墓地などに出没して人を食べる類、と三ランクある。破壊と滅亡を司る神と言われ、甲冑を着け、刀をもって白獅子に乗った姿で描かれる。
月天 Gatten 正しくは月天子、月宮天子、名明天子、宝吉祥との異名でも知られる。月や月光を神格化した神で、勢至菩薩の変化神とも言われている。複数のガチョウの背に乗る姿で描かれる。
摩利支天 Marishiten 陽炎を神格化した仏教の守護神。顔が三面、手が六本の三面六臂の姿で猪の上に立つ像が多い。日本では古くから武芸の守り神として信仰され、日常生活の様々な局面で摩利支天の名を念じる「一印法」と呼ばれる秘法が武士の間で流行したこともあったという。摩利支天像は像自体にご利益があるとされ、携帯に便利な小さな像がお守りとして携行されることもあった。
韋駄天 Idaten 韋駄天はヒンドゥー教における軍神スカンダのこと。出雲の僧が泉湧寺にお参りし、居合わせた里人と一緒に仏舎利を拝むことになったが、突如として稲妻が光り里人が足疾鬼に変身、仏舎利を奪って逃げ去った。驚いた僧が心を込めて祈願したところ、韋駄天が現れ、たちまち足疾鬼を追い詰めて仏舎利を取り返したという逸話がある。そこから韋駄天は修行を妨げる魔があると、走ってきてその魔障を除く、そのため僧房や庫裡などの守り神とされている。
歓喜天 Kankiten ヒンドゥー教の最高神シヴァと妃パールヴァティーに生まれる韋駄天や伎芸天はその弟妹にあたる。ガネーシャともいう名でも知られ、頭は象で身体は人という象頭人身の神である。仏教に取り入れられ、仏法の守護者となり、除難・福徳の神として、とくに商家や水商売の人びととのあいだで熱烈な信仰を集めた。合歓の秘仏として扱われている。
荼枳尼天 Dakiniten 人肉を食らう鬼女から、大日如来がいさめ、善神として福徳の神に転じた。日本では稲荷の神体が狐でであるところから、荼枳尼天・狐・稲荷となり、荼枳尼天は稲荷と習合。稲荷神のご神体として崇められるようになった。
伎芸天 Gigeiten 伎芸天は技芸を成就させる善神とされ、首飾りなどを着けた容姿端麗な天女の姿をしている。現存する古像の作例は秋篠寺の一体のみとされる。
深沙大将 Jinjyataisyoh 三蔵法師を助けた紗悟浄のモデルとして伝わる守護神。奇怪な相貌をした半裸の鬼形の立像で知られ、首に髑髏の首飾りを着け、腹部には小児の顔を出し、膝がしらに象の袴を着けている。
龍樹菩薩 Ryujyubosatu 龍樹は第二の釈迦とも呼ばれるインドの僧。僅か90日でで小乗仏教の教えをすべてマスターした天才で、山に籠って大乗の方を学び、すべての煩悩やとらわれを超越した「空」の真理を体得した。その後大乗の教えを広めることに大きく貢献し、後の大乗仏教全般に決定的影響を与え、菩薩と呼ばれるようになった。
薬王菩薩 Yakuohbosatu 釈迦の脇に控える兄弟の菩薩の兄。星宿光長者と名乗り、人々を救済しようと思い立って菩薩となった。弟の薬上菩薩は雷光菩薩長者と名乗り、兄に従って菩薩になった。釈迦如来は「二菩薩いずれも未来において成仏し、兄は浄眼如来、弟は浄蔵如来となるであろう」と弥勒菩薩に告げたという。薬王菩薩は薬草、薬壺を、薬上菩薩は薬壺を持つ。2018.8.8