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 疑問がカギ


   道元の思想について『要約現成公案』が終わった所だが、友人から次のような問いのメールが届いた。
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 涼しかりけり」
 後ろの句は短歌の定番で言えば、感情ということですが、どういう事だろう。分かるような分からないような」
 これに関して私はインターネットで調べ次のように回答した。
「1247年(宝治元年)鎌倉で北条時頼(同夫人とも)の求めで詠んだとされる題詠十首の内。題の「本来面目」に即すると、本来備わる真実のすがたを説く禅の思想の暗喩になる。「すずし」は精神が快く清らかなさま。四季の景物を列挙して、推移する自然のさまを観想すれば清くすみきった境地が得られることをいう。自然と人間のありのままのすがたを示唆する歌で、日本ならではの四季を歌い上げた名歌である」
 これは間違いではない回答だと思う。だがよく考えてみるとピントがぼけた回答のようである。何故なら、冬以降の下の句が分かりにくいことは確かで、「冬雪降りて美しかりけり」ぐらいにしておけば、この疑問は生まれなかったのではなかろうか。つまり、下の句に道元らしい問いかけが見える。
 道元という人は最初は二つの相対する事例を上げて比べて見せ、その後でそれは密接に関連し一つとなるという論法を展開する。
 読む者は常に後段の落ちに疑問を持って臨まないと誤った解釈になってしまう。その道筋をつけることはかなり難しい。
 大切なことは、つい見逃してしまうようなことに気が付き疑問を発し、それを解明しようと考えるということだと思う。答えはまず疑問を持つことから生まれるものだと気が付いた。








 


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