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 日本昔話(第三十八話) 爺に金


 これはうっかりしているところへ金銀が飛んで来て、知らぬうちに大金持ちになった話であります。
 むかしむかしある村に、善い爺と悪い爺がおりました。ある時善い爺は一人で山に入って仕事をしていますと、どこからともなく「取っつこうかくっつこうか」という声が聞えました。
 あんまり何度もその声がするので、爺は何心なく「取っつかば取っつけ、くっつかばくっつけ」と言いますと、不意に両方の松林の中から金と銀とが幾らともなく飛んで来て、肩や背中にウンというほど乗りました。それを持って帰って家の中にひろげて、婆と二人で眺めていると、隣りの悪い爺がやって来て、それを見て大そう羨しがりました。
 おらもその真似をして宝物を背負って来ようと、次の日は隣りの爺が同じ山へ入って行くと案の条左右の山の中から、「くっつこうか取っつこうか」という声が聞えて来ました。早速大喜びで「くっつかばくっつけ、取っつかば取っつけ」と言って背中を出すと、今度は松の樹の上から松脂が飛んで来て、重いくらい悪爺の肩と背中に附きました。「婆あ婆あ今帰って来たぞ、早く灯火をつけて来て見せよ」と言って、婆は大いそぎで近くまで火を持ってきましたら、その火が松脂にうつって、悪い爺は大火傷をしたそうであります。2018.4.29

 

 

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