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 日本昔話(第四十三話) 狐の恩返し


 とんと昔、爺様が朝起きて、内庭を掃いていますと豆が一粒庭の隅に転かっでいました。これは勿体ないと裏の畠に持って行って蒔いて置いたところが、やがて芽を出してぐんぐんと大木になり、これは八石まではありませんでしたが、一本の豆の木に豆が一斗も、二斗も実っていたそうです。
 ところがある日一匹の狐がやっで来まして、一度にその豆をぺろりと食べてしまいました。老人は真赤になって怒っで、「折角おれが丹誠をして作った大豆を盗んで食ってしまうとは憎い獣だ。ぶち殺してくれる」と言ってどなりますと、狐は大きにあやまって「どうかゆるして下さい。その代りにはお前様に金儲けをさせてあげます」というから、それならばと言って、こらえてやりますと、すぐに一頭の良い駒に化けました。爺はそれを長者の家へ引いて行って、高い値に売ってお金を儲けました。
 それから四五日もすると、馬に化けていた孤はもう逃げて帰って来ました。「今度は一つ茶釜に化けて上げましょう」と言って、まことによい頃合の茶釜になりました。爺はそれを又お寺に持って行って、お茶の好きな和尚に売りつけました。和尚がその茶釜を炉にかけると、きいんきいんと鳴ります。小僧が川に行ってその茶釜を磨きましたら、「痛い痛い、小僧そっと磨け」と言います。「これは大変、茶釜か物を言いました」。
 「なんのそんな事があるものか」と、和尚がうんと火を焚いてその茶釜をかけますと、狐はとうとう我慢がしきれなくなって、「熱いぞ和尚がげえ(許して)」と言って、尻尾を出して逃げて行ったという話。(津軽五所川原)2018.8.10

 

 

 

 


 

 

 


 

 

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