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 日本昔話(第四十九話) 黒鯛大明神


 むかし土佐国のある山奥の村へ、浜から一人の魚商人(あきんど)が、魚を売りに入って行きました。さびしい山路で、路の脇の林の中に、誰かか罠をかけて置いて、それに山鳥が一羽かかっているのを見ました。魚売りはこれを見て欲しいと思いましたが、ただ取って行くのはよくない事であるし、そこにちょうど人がいないので、代りに自分の籠(かご)の黒鯛を三尾挾んで置いて、黙ってその山鳥を取って帰ってきました。
 そのあとから村の人が来てみて、「山に黒鯛のいるのが既に不思議であるのにそれが山鳥の罠にかかるというのは只事(ただごと)ではよもあるまい。なんでもこれは天の神のお示しであろう」と、一回評議をして直ぐに小さな社を建てて、その三尾の黒鯛を斎い(いわい)込めて、黒鯛三所権現と唱えて祀り(まつり)ました。その評判が伝わりますと、方々からお参りに来る者があって、社は大へんに繁昌しました。
 後に魚売りが又やって来て、山鳥を持って行った話をするまでには、もう繋昌のお宮になっていたそうであります。2018.10.24

 

 

 

 

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