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 日本昔話(第五十話) 瓜(うり)の大事件


 むかし八幡太郎義家と安倍清明と、忠明という名医と解脱寺の観修僧正という名僧と四人が御堂関白道長の家に来合せたことがあったそうです。
その日は五月の一日で、奈良から一籠の早瓜を献上してきました。「今日は御殿の御物忌(おんものいみ)の日であるが、こういう外からきた物を、内に入れてもよかろうかどうか」ということで、早速先ず安倍晴明が占いをして、この瓜の中には一つだけ、毒気のある瓜があると言いました。それではと観修僧正に加持(密教においては加持は仏の大悲大智が衆生に加わり(加)、衆生がこれを受け取ること(持)と解し、行者が手印を結び、口から真言を発し、心に本尊を観ずれば、行者の三業を清浄にして即身成仏が可能になるという説がある)をさせますと、しばらく祈っているうちに多くある瓜の一つが、ぴょんぴょんと跳ね上がるので、それに毒気があるということが知れました。
「それならば次には医師忠明が針を立ててその毒気を去るように」という命を受けて、その瓜を手に持って取りまわし取りまわし二カ所に針を立てますと、もう瓜は飛び上がらなくなりました。
おしまいに、八幡太郎義家は、腰刀を抜いてその瓜を切り割って見ましたが、果して晴明の占いの通り、その瓜の中には一匹の小蛇が入っていました。そうして医師忠明の打った二本の針は、ちょうどその蛇の両眼に刺さっており、義家の腰刀はただなんとなく瓜を割るように見えましたけれども、ちゃんとその小蛇の首を切り落していたそうであります。2018.11.1

 

 

 

 

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