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 日本昔話(第五十一話) 大歳(おおとし)の焚き火


 昔々ある田舎に、貧乏な一人の馬方がおりました。明日は元日だというのに一つも仕事がなくて、空の馬を牽(ひ)いて家へ帰って来ようとしますと、街道の松並木の蔭に、きたない物乞いが倒れて呻っておりました。「やれやれ俺よりもまだ気の毒な人がおったか、これは助けてやらなければならぬ」と思って、幸い空っぽの荷鞍(にぐら)の上に載せて戻って来たそうです。そうして女房と相談をして、土間に筵(むしろ)を敷いて横に寝かせ、何もなけれども地炉(じろ)の火だけはうんと焚いて、どうやらこうやら年だけは取らせました。
 元日の朝はお天道様の高く上がらっしゃる迄も、その乞食は起き出して来ませんから、傍(そば)に寄って「おいおい」と、起して見ても返事がない。なんだか冷たくなっているようだと思って、びっくりして掛けてやった藁(わら)の筵をめくって見ると、物乞いだと思ったのは大きな黄金の塊りでありました。それを使ってその馬方は、すぐに大金持ちになったそうです。めでたしめでたし。(三河南設楽(したら)郡)2018.11.11

 

 

 

 

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