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 日本昔話(第五十五話) 分別八十八(ふんべつやそはち)

 

 むかしむかし奥州のある村に、八十八という名前の男が六人住んでいました。では誰が誰だかよく分りません。そこで一人は気が荒いから外道(げどう)八十八、一人は博奕が好きで博奕(ばくち)八十八、一人は田を作っているから百姓八十八、一人は米の商いをするゆえに米屋八十八、又一人は盗みをするので、盗人(ぬすっと)八十八、今一人の八十八は智慧があるところから、人が分別八十八という名を付けて間違わぬようにしていました。
 ところがある日外道八十八は博奕八十八と喧嘩をして、うんと打ったら博奕八十八が死んでしまいました。殺す気はなかったのでびっくりして、困って分別八十八の所へ相談に来ました。「それではその死骸を百姓八十八の田の水口に持って行って、そっと田の畔(くろ)にしゃがませて置いて見よ」と教えてくれました。
 その晩、百姓八十八は田の水を見廻りに出て見ると、自分の田の水口に誰だか知らぬがしゃがんでいます。「憎いやつだ、また水を盗みに来たな」と言って後から棒で一つ打つと、ころりと倒れ、それをよくみると博奕八十八でありました。「飛んだことをした、どうすればよかろうか」と、これも外道八十八と同じように分別八十八の家へお土産を持って相談に来ました。「それではその死体を空俵につめて、米屋八十八の倉の前の米俵の一番上に置いて来て見よ」と教えてくれました。
 そうするとその次の晩に、盗人八十八は米屋八十八の倉の前から、米かと思ってその俵を盗んで来ました。家に戻って俵を開けて見ると、それは博突八十八の死骸であったので、肝を潰してしまいました。「どうしたらよかろうか」と思案に暮れてやっぱり分別八十八の所へお礼を持って智慧を借りに来ました。
 「そんなら今夜遅くなってから博奕八十八の家の表戸を叩いて、今戻ったぞと言って見よ。きっと女房が怒っているから、やかましいことを言って戸を開けぬに相違ない。そうしたら死んだ博奕八十八を、門口の井戸の中へ投げ込んで来るがよい」と教えてやりました。それで盗人八十八は教えて貰った通りに、夜更けに博奕の家の戸をことことと叩いて「かかあよ今帰って来た。開けてくれ」と作り声で言いました。そうすると家の中では。果してかかあが大声を出して、「今帰ったもないもんだ。お前見たいな人は死んだ方かいい」とわめきました。その時に死骸を井戸の中へ、どぶんとほうり込んでさっさと帰りますと,後で女房はその音に大騒ぎをして、村中の人を頼んで博奕八十八を引き揚げてもらって、それを見ておいおいと泣いたそうです。
 分別八十八だけは皆からお礼を貰って、一人でうまいことをしました。(陸中上閉伊郡)2018.12.19

 

 

 

 

 

 

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