2019.5.1 口の生理学的考察(4)
このテーマの最後は「咳」について考察する。
咳は誰でもよく出る最もポピュラーな口の生理現象。わざとする「空咳」などのようなある種のサインのようなものまであるほど幅広い。
生理学的説明ととしては「【咳】呼吸をせきとめて短くはき出す強い息。
のどや気管の粘膜が刺激されると、反射的に起こる。のど・気管の粘膜が刺激されたとき、反射的に呼吸を止め、短く強く吐き出す息。また、その音。しわぶき(古くからある表現)」とある。
これに示されているように、喉の気管と密接な関係にある。わたしの場合元々器官が弱く、色々なシーンで咳が出る。一番苦しいのは物を食べたり、飲んだりしている時に気管に入ってしまう(誤飲)場合で、息が詰まるは鼻に入るは涙は出るはのパニック状態が出来(しゅったい)する。
音で表記すると「エヘン」「ゴホンゴホン「コホン」」などが耳慣れた表現だ。この中で「ゴホン」の類は気を付けなければならないサインである。風邪(かぜ)の前兆で特に喉がひりひりと痛む場合は「赤信号」で、この場合風邪は治っても咳が残る。私などは夜眠れないほど咳に悩まされた経験が何回もある。ひどい時は抜けるまで3か月もかかる時もあった。こうなると
別の病名が付いて「気管支喘息」といことになる。
「エヘン」は空咳と言って、最初に書いたようにわざとする咳で相手の気をや注意を引き付けるためにする咳で「咳払い」とも言う。
「えへん虫」と言う言葉を耳にした覚えはあると思うが、これはCMからきたもので大正製薬「ヴイックス」のキャラクターで喉の「イガイガ」を表現したものだと言われている。
「ゴホンゴホン」と咳が止まらないような状態で外出する時、特にバスなど人が密集している中にあってはマナーとしてマスクをするような心遣いは言うまでもない。
次回は生理学的考察のその2として「目(眼)」について考えてみたい。
2019.5.4 目(眼)の生理学的考察(5)
今回はシリーズ5回目「目(眼)」について考察する。
『目は人間の眼(まなこ)なり』これは何か当たり前のような言葉に聞こえるが、この言葉かの有名な吉田松陰の残したもので「目は人となりを表し、瞳はその人の精神状態を表す鏡だ」ということになっている。松陰先生の言葉だから御大層な響きを持っている。
次はぐっとくだけて、関西喜劇「吉本新喜劇」の第1期生通称「奥目の八ちゃん」とよばれ親しまれた 漫才師・歌手の岡八郎のヒット曲に次のような歌詞がある。
「目は人間のマナコなり 目にもいろいろ さがり目たれ目 出目に細目に とり目に近目 にくいあの娘は 流し目色目 チラリウインク 目で殺す エゲツナァ!」と松蔭先生かたなしである。と言ったように、眼は顔の中心的存在であるので、いろいろと話題を提供してくれる生理器官である。
医学的には松陰先生の言葉と同じで、視覚器官の「め」を漢字で書きあらわす場合に最も一般的なのが「目」で、「眼」という漢字は「まなこ」とも読み、もともとは瞳を表す言葉とされている。
目と眼を厳格に区別すると(wikipedia)「目」はその形や外観(形状)から見るという行為(機能)、さらに「目」や「見る」ことに関連する比喩表現まで幅広く使うことができる汎用性の高さに特徴がある。「目」という言葉は広範囲にわたって使われている漢字だが、医学や生物学上での「目」の正式名称は「眼球(眼)」で「目」という漢字は使わない」と大体その違いが分かる。
よく諺などで使われる「目」はこの目である。ここでは3例程紹介する。
•生き馬の目を抜く(いきうまのめをぬく)すばしっこく人を出し抜き、抜け目がなくて油断できないさまのたとえ。
•一目置く(いちもくおく)相手の能力を認めて、敬意を払うこと。すぐれていることを認めて、一歩譲って遠慮すること。
•目から鱗が落ちる(めからうろこがおちる)あることをきっかけに、今までわからなかったことが急に理解できるようになることのたとえ。
というように数多くの諺や喩が残されている。
私など最近とみに目が弱くなり、最近は白内障の手術もしたくらいであるから、「目は心の鏡」とも言われるが、少し霞がかかり始めたので、気を引き締め直す必要がある。
2019.5.7 耳の生理学的考察(6)
最近随分と耳が遠くなった。その代わり目が近くなった。今回は耳について考察する。
80年間もお世話になった耳、この歳にしては人よりは聞こえる方だがそれでも機能は低下している。耳は生理学的には普通頭の両側に二つあって、耳たぶと言う集音器の働きをする葉っぱのような突起物である。その中にあるのが内耳で鼓膜があって音の振動を聞き分ける。その他三半規管というのがあるが、文字通り3つの半規管で構成される。説明が面白いのでいつものようにwikipediaから引用する
「すなわち「前半規管」「後半規管」「外半規管」は、それぞれがおよそ90度の角度で傾いており、X軸・Y軸・Z軸のように三次元的なあらゆる回転運動を感知することができる。
半規管の外側は骨でできており(骨半規管)、そのすぐ内側に膜がある(膜半規管)。それぞれ内耳の骨迷路・膜迷路の一部を構成している。膜半規管の内部はリンパ液で満たされており、頭部が回転すると、体内にある三半規管も回転し、体(頭部)の回転が感知できるしくみである。回転が続くとリンパ液も一緒に回転してしまうので、体の回転が止まっても今度はリンパ液の回転がすぐには止まらず、誤った信号を脳へ送ることになる("目が回る"状態)」
私も目がくらくらして吐き気を催すメニエル症候群の気がある。子どもの頃は年中乗り物酔いをしたものだ。天性の方向音痴もこれに起因しているものと思われる。
次に耳かきで耳掃除をして、その収穫ブツを視認して満足する耳掃除は本当に必要なのだろうか。調べてみると意外にも次のような記事を見つけた「アメリカの耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、2017年1月に耳掃除に関する新たなガイドラインを発表した。
それによると、耳には自浄作用があるため、通常ならば耳掃除は不要と伝えている。わざわざ耳かきや綿棒などでほじったりしなくても、耳垢は咀嚼やおしゃべりなどの振動で、自然に体外に排出されると説明している。
さらに耳垢自体にも、ホコリや虫などの侵入を防ぎ、雑菌の繁殖を抑えるといった働きがあるということだ。これによると、過度な耳掃除は却って害になる可能性すら示唆している」
次回は耳の働きについて考察する。
2019.5.11 耳の生理学的考察(7)
耳の働きであるが、主に外界の情報を収集することにある。それは音として認識される。言葉であったり、音楽や車や機械の音を上げることができる。
そうした情報を聞き分ける豊かな耳を持った人がいる。厩戸皇子(うまやどのおうじ:聖徳太子)が人々の請願を聞く機会がその数は10人にも上ったが、皇子は全ての人が発した言葉を漏らさず理解し、的確な答えを返したというエピソードがある。これは史実でも、日本書紀推古紀に「一聞十人訴,以勿失能辨」とあり,同時に10人 の訴えを聞き分けて裁いたという記述が残っている。
最近のAI技術の発展は凄まじいものがありApple社が音声アシスタント「Siri」に声の聞き分け機能を持たせようとして出願した特許資料によると、Siriが今後、複数の人物を聞き分けて、人によって違った反応を返すようになるかもしれない。今回の特許は「音声入力処理のためのユーザープロファイリング」と題されている。
ここで耳がどのような働きをしているのか、見方を変えて成句などを上げて具体的表現で示すとこうなる。
誰でもよく耳にするものを並べると「耳が肥えている」「耳が痛い」「耳が早い」「耳に障る」「耳に残る」「耳に入る」「耳を立てる」「耳を疑う」などは説明を要しないだろう。
このほか諺などを紹介すると「馬の耳に念仏」「馬耳東風」「壁に耳あり」「寝耳に水」などは誰でも知っている。ちょっと珍しいものとしては「耳を掩おおいて鈴を盗む」というのがあり、これは「音がして他人に知れるのを恐れて、自分の耳をふさいで鈴を盗む。策を弄して自らを欺いても益のないこと」という諺。
ちょっと方向変換して、よく「あっちっち」と言って耳たぶを掴むという慣わしを知っているだろうか。これには根拠があって、耳たぶが体の中で一番冷えているからで、体全体よりもなんと約8℃くらい温度が低いと言われている。人は本能的にそのことを知っていて、熱いものを触った時にはとっさに耳たぶをつまんでしまう動作に出てしまう。
もうそろそろ耳に胼胝(たこ)ができたころだろうから、まだ耳にまつわる言葉は一杯あるが、今回はこの辺でお開きとしよう。次回の生理学的考察は「鼻」。
2019.5.14 鼻の生理学的考察(8)
私の鼻は遺伝的要素が強いらしく親父の鼻に似ているという。と言うことで今回は鼻について考察する。
鼻は顔の中央に突き出てデンと胡坐(あぐら)をかき目立つ存在である。鼻腔は2つあり息をするのと発声に重要な役割を果たす。口と鼻はつながっており、口で息することもできるが、余計なものを吸い込まぬためにも鼻呼吸の方が良い。鼻は同時に目や耳にもつながっている。その証拠に涙を流すと鼻も同時に出るのはだれでも経験済みだろう。鼻をかむと耳にツーンと響くことがある。これは鼻と耳がつながっている証である。
では鼻に関する表現(成句)からその働きを調べる(ベネッセ表現読解国語辞典)。
「鼻が利く」という言葉がある。これは(1)嗅覚が鋭くよく臭いを嗅ぎ分ける。(2)巧みに利益になる話を見つけ出す。これは警察犬の鼻が犯人を見つけるのとは違い、儲け話を見つけ出す機能とでも言おうか。
「鼻に付く」飽きて嫌になる。また、言動が嫌味に感じられる。わざとらしさが鼻に付くというなどの表現をする。
「鼻を突き合わせて」これなどは交渉事などで人が極めて近くに寄り合う様を言う。
「鼻を撮(つ)まれても分からない」真っ暗闇で何も見えない。鼻を撮まむ人はどうやって人の鼻を探り当てたのか疑問が残る。
「鼻で笑う」相手を見下したように冷やかに笑う。冷ややかな笑いとは「氷の微笑」のようで何かゾッとするものがある。
「鼻を鳴らす」鼻にかかった声を出して甘える。犬みたいである。
「鼻が高い」得意になる。誇りに思う。有名人と同じクラスで「鼻が高い」などという使い方。
「鼻を明かす」思いがけないことをしたり、出し抜いたりして、人をアッと言わせる。人との競争などに勝った時にこういう表現をする。
このように鼻に関する成句は非常に多い。それだけ鼻の形や働きが目立つから、このように重宝な使い方ができるのだろう。「目から鼻に抜ける」と言うように顔の他の器官と食い合わせた成句もある。これは「りこうで機転がきく。また、抜け目がない」という意味で使われる。しかし、「口から鼻に抜ける」という事例は多くある(特に気管を詰まらせると鼻に出る)が成句は見当たらない。
また、耳と鼻と口は密接な関係にあり「耳鼻咽喉科」というように一緒に纏められている。「眼科」だけが独立しているのもきっと特別な因果関係があるのだろう。
このシリーズでは顔を中心にそれぞれの器官の構造や働きについて考察してみた。
2019.5.17 頭の生理学的考察(9)
今回取り上げるのは頭であるが、「もうちょっと頭を使えよ」というように言われる頭のことで、これは体の司令塔の働きをするものだから、細かく観察すると実に幅広い。
そこで頭に浮かぶままに書き連ねていくと、先ずこのコラムを考えるという大きな働きがあり、それをどんな文脈で形作るかと工夫するのにも頭を使かう。ここで「考える」こと「工夫する」ことが頭の働きであることが分かった。
今回取り上げている「生理学的考察」の五感も頭の指示ですべて行われているのだから、頭の働きが止まればそれらの機能も停止するから、生死に関わる「行動」の源泉と言えよう。
頭が良いとか悪いとか言うが、これは記憶力の差が大きな要因と考えられるから、この「記憶する」能力も頭の品質を左右する能力のひとつである。
ここで例のごとく頭の成句をいくつか見て、いままでに示した「頭の働き」をおさらいする。
頭に入れる:記憶する 頭を痛める:心配する 頭を搾る:工夫する 頭を悩ます:思い煩う 頭を捻る:熱心に思考する などを上げることができる。
これからが「生理学的考察」になるが、こうした頭の働きに大きく関わる「脳」について考える。重複する部分も含めて見ていく( ogkenpo.com)。
脳の働き①考える、判断する、②五感の働き、③記憶をコントロール、④生命活動、⑤運動機能、⑥感情をコントロール、⑦言語機能(話す・聞く・読む・書く)などである。
日本人成人の脳の重さは・男性:1350~1400g・女性1200~1250g
医学的に見ると(Mindsガイドラインから)
脳の全体は頭蓋骨で守られ、頭蓋骨のすぐ内側には硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜がある。くも膜と軟膜との間にはくも膜下腔という隙間があり、そこは脳脊髄液という無色透明の液体で満たされている。この髄液がクッションとなり脳を保護している(この部分に出血するのがくも膜下出血である)。 脳本体の部位は大脳、小脳、間脳(視床、視床下部)、脳幹といった4つの部分から構成されている。それぞれの部位で働きが分かれているが、次号は「脳の部分の主な働き」から始める。
2019.5.23 頭の生理学的考察(10)
人の脳は全体の10%程度しか使われていないという説がある。現在ではこの「脳の10%都市伝説」は正当性を欠くということで定説とはなっていない。ところが都市伝説は消えたようにに見えるが、今でも語り継がれており、それだけ脳に関しては完全に解明されていない疑問が多く存在していることを裏付けている。
今回は脳には色々な働きがあるが、知能とはどういうものなのだろうか。よく脳の皺の数が多いほど知能が高いというが、では知能指数との関係はどうなのか。そうした疑問について考察する。
次に脳の重さやしわは頭のよさと関係があるのだろうか。前回日本人成人の脳の重さは男性:1350~1400g・女性:1200~1250gと記したが、重さだけで比べれば男の方が重いから、それだけ頭が良いかというと、決してそうではない。男女は生物学的には様々な点んで異なっていることが判明しているが、どちらが優位ということは言い切れない。
そうなると結局、私が思うに、残るところは頭の皺の多さが頭の良さに通じるということになるのだが、これも明確な判断基準にはなり得ていない(次回に検証する)。
それでも客観的測定方法として知能指数が挙げられる。これには男女差別はない。知能指数(IQ)とは数字であらわした知能検査の結果で、近年では「同年齢」を基準とした算出法が標準とされている。これは「同年齢集団内での位置」から算出される相対評価で、大学入試に使われる偏差値と同じで中央値と標準偏差によって算出される。中央値を100としてIQが高いとか低いと判定する。大体70–130の間に約95%の人が収まるというそうだ。
最近入社試験などでは、感情表現の豊かさや、仕事への意欲、人間関係を築く能力などを示す「EQ」を重んじて、人材の登用を行う企業も増えている。EQでは問題処理能力や事務処理能力に加え、環境に適応する能力や仕事に対するモチベーションをコントロールする力など、知能を多面的にとらえたより実質的な判断材料となっている点が「知能」を重視するIQとは違う判断基準として広まっている。これなどは脳の働きを実質的にとらえる研究成果の表れと言えよう。次回も頭(脳)の働きについて考えていく。