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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

 筆まかせ抄現代訳 第二十話 随筆の文章

 

 練卿が私(*子規は自分のことを余と言っている。以降は「私」と書き換える。今までは「自分」)の家に来てこの随筆を読む。自分は予め断っておいた「君は先ず私の話を聞きなさい。この随筆と言ったようなものは、私の備忘録とでも言おうか、出鱈目な書きっぱなしとでも言おうか、心にちょっと感じたことをそのままに書きつけておいたものだから、杜撰(ずさん)なところが多いのは言うまでもない。ことにこれはこの頃になって始めたので、書くことを続々と思い出して困ってしまう。汽車も避けようと言うほどの走り書きでもって文章も文法も何も構わず、和文あり、漢文あり、直訳文あり、文法は古代のもあり、近代のもあり、自己流もあったりして、一度書いて読み返したり書き直したりしたことはない。そういうことだから心して読んでくれたまえ。
 しかし、ここに一つ言うことがある。日本の文章は随分と書き方が多くて、どうしたらこれを定まったものにするかと言うことは諸大家の議論になるが、今この随筆の文は拙劣であるにもかかわらず、不揃いなのにもかかわらず、我の思うままを赤裸々に、白粉もるけつ、紅もつけず、衣装もつけずして舞台に出したものだから、その拙劣なるところ、不揃いなところが、日本の文章を改良するのに参考になるのではなかろうか」と笑ったものだ。2019.6.22


 

 

 

 

 

 

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