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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

 筆まかせ抄現代訳 第二十六話 交際


 私は交際を好も者である。また交際を嫌う者である。どうして交際を好むかと言うと、良い友達を得て胸襟を開いて語らい、困った時は助け合いたいと欲しているからである。どうして交際を嫌うかと言うと、悪い友達を避けて時間の無駄をしないためである。誘惑に乗らないためである。私は偏屈者である。頑固者である。好きな人はむやみに好きで、嫌いな人はとことん嫌いである。そんな訳で朋友を選ぶ時も先ず人物を見る。次に学識を見る。正直で学識のある人を第一等の友とする。これは多くを得るのは難しい。それほど学問は無くても正直で殊に淡白な人を第二等の友とする。私の友の多くはここに属する。学識はあっても不淡白な利己心の強く、心が通じ合わない者を第三等とする。私は止むを得ない時でなければ、こういった輩(やから)とは付き合わない。その上私は進んで交際することをしない男である。そうしたことから三、四年顔を突き合わせている男でも付き合いをしない者もいる。機会があればほんのちょっと話しただけで十年の交際にも勝ることだってある。
 とにかく、付き合い始めたら熱心に付き合う方である。このようにして私は良友を得たいと思っているにもかかわらず、常に良友と交際する機会がえられない傾向が強い。恐らくは他人もこうした感じを抱いているのではないかと、自分が良友を得た時は、この者を他人に紹介することを好み、また他人がどれほどの人物かを知らせるために、人前でその者を褒め上げたりもする。したがってこの随筆の中でも所々に良友の性質を好んで書いている。その代わり私はまた悪口を述べる術に長けており、嫌は友は人前であからさま罵詈雑言して罵倒することも多い。
 そういう訳で私も多くの仲間たちに願うことは、良友を紹介してほしいということである。
 そこで下記の通り朋友の一部を挙げてみる。
愛友 細井岩氏(*細井岩弥) 良友 武市庫氏(*武市庫太) 好友 太田躬氏(*太田正躬) 敬友 竹村鍛(*きとう)氏 益友 三並良(*はじめ)氏 旧友 安長知氏(*安長知之) 厳友 菊池謙氏(*菊池 謙二郎) 畏友 夏目金氏(*夏目漱石) 文友 柳原正氏(*柳原正之) 親友 大谷藤氏(*大谷藤次郎:繞石) 酒友 神谷豊氏(*神谷豊太郎) 剛友 秋山真氏(*秋山真之) 賢友 山川信氏(山川信二) 郷友 勝田計氏(*勝田主計)  亡友 清水遠氏(*清水則遠) 高友 米山保氏(*米山保三郎) 直友 新海(*にいのみ)行氏(*新海正行:非風) 小友 藤野潔(* 古白)氏

 *若き日の子規の交友関係については次のような記事がある「 漱石が東京での友人とすれば、常磐会寄宿舎に同郷人の新しい友人が増えてくる。内藤鳴雪、竹村鍛、新海非風、五百木飄亭、大谷是空らである。
 内藤素行(鳴雪また南塘と号す)は弘化4年(1847年)生まれで子規の20歳年長であった。県学務課長として勤務したのち文部省に勤めていたが22年4月から常磐会寄宿舎監督となった。一方、五友の一人竹村鍛(錬卿、黄塔あるいは松窓)も常磐会寄宿舎に入ってきた。鳴雪は松山でも漢詩人として知られていたところから、鍛、子規を加えて言志会を結成し、聯句などが作られ「言志会稿」が出された。一方、新海(にいのみ)正行(非風)は常磐会寄宿舎で初めて知り合ったが、五百木飄亭は河東静谿の漢詩塾の仲間であり、彼らを中心として紅葉会が結成され、ここでも回覧雑誌「つづれの錦」が作られた。いずれにしろ、中学時代の回覧雑誌が復活する。そしてここで参加した友人たち(さらに古白を加えて)が、子規が俳句にのめり込んで行く際の最初の仲間となったのである。
 大谷藤次郎(是空)は予備門で知り合った友人であるが、大阪に戻っていたところから「お百度参り」という葉書の交換を始め七十数回に及んだ(BLOG俳句新空間より)」2019.8.16


 

 

 

 

 

 

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