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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

 筆まかせ抄現代訳 第七話 関係


 世の中の事はそれほどまではと思はない事でも非常に広く影響を及ぼすものである。それ故に事々の原因となり、結果となる関係を探ってみると、世の中の事は殆ど相関関係を持たないものなどないと思うべきだ。
 子どもの歌に「その皮どうした。太鼓に張った。その太鼓どうした云々」といった例なども、とても意味のある面白い教育法である。
 このようにして太陽が地球に及ぼす影響が大きいことは、いうまでもなく人の知るところである。これと関係あることだが、今雨の降る影響を語ると、雨の降る日はお日様は見えない。黒雲が空いっぱいに広がると書斎の窓は真っ暗になり、目の病が安らぐ者がいるかと思うと反対に眼を患う者もあるものだ。
 また温度の変化のために病気にかかる者がいたり、運動散歩ができないために胃病が増える者がいたり、憂鬱になってうつ病になってしまう者もいる。
 人の往来が少なくなって車夫は儲けにならないが、つけの車屋(今風に言えばレンタル・リースの車屋)は車賃をガッポリと稼いで、儲けが多い。
 また寒ければおしっこに行く回数が増えて、便所の肥溜めの水量が急速に増える。こうして数え上げればそうした因果関係は際限がない。かつて「風吹兮猫悲、油価貴兮菓子屋喜(風が吹いて砂が飛んで目に入り失明した。生計を立てるために三味線を習い、三味線は猫の皮を使うようで、猫が悲しむ。油が高いので明かりはつけず、早めに寝る。早めに寝ると子供ができやすく、子供は菓子を買いたがるから菓子屋が喜ぶ)」という漢詩を聞いた覚えがある。これもまたそのような例に外ならない。2019.2.14


 

 

 

 

 

 

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