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郷土の歴史「神奈川区」(12)

第二章,神奈川湊

1.武士の出現
(1)神奈川の武士

源頼期が関束の武士に守られて鎌倉の地に入つたのは治承4年(1180)10月であった。
その頃の武蔵国は平氏の勢力圏にあり、平知盛が治めていた。各地に生活する人びとは血縁的に、地縁的に結合し、集団を作り、その首長である練梁に統率され、農業に、牧畜に従事していた。これらの武士団は自分の生活圈である領地や権利を守っていくために、 さらに有力な武士団の保護と保障を求めて結集していった。
 横浜市域内の小武士団の動きに関しては必ずしも明確ではないが、幕府の記録の集成である『吾妻鏡』のなかに、青木氏、寺尾氏、馬場氏、平子氏、鴨志田氏、奈良氏、都筑氏、諸同氏などの名前がみられる。 .
 これらの小武士団は一般的にはその地域の地名を名乘つており、青木、寺尾、諸岡(師岡)氏は現在の神奈川区域とも関連していたと考えられる。
 師岡保・小机保 神奈川区一帶はこの当時は師岡保という領域に含まれていた。保というのは武蔵の国を統治する国司が管理する土地で、 一般に調整した者の名を付けて呼ぶのが普通である。この師岡保は師岡氏によって開かれたと考えられるが明確な史料が存在していない。しかし、師岡兵衛尉重経なるものが文治5年(1189)7月、奥州藤原氏倒征軍に参加しており、建久六年(1195)には諸岡次郎が源頼朝に従つて奈良東大寺参請の隋兵として、他の武士と共に名を連ねていることからも、この地域に土着し、成長した一族であったと考えられる。
 中央の律令政治が混乱をきたすころには、遠く離れた関東をはじめとする地方は任期が終っても帰らない国司やその地域に確力をもつ土着の有力者によって、 その地域が私有化されていった。
 武士の練梁となり、征実大将軍となった源頼朝は自分に味方した武士を御家人として、優遇し働きよって、領地などを与える恩賞をおこなった。また、侍所という役所を置き、東国の武士や御家人の続制をはかって幕府政治を確立していった。
 寿時永2年(1183)2月頼朝は鎌倉八幡新宮の若宮領として、神奈川区域が含まれる師岡保のうち、大山郷(のちの鶴見郷)を寄進した文書が存在している(下の画像2-1)。
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 神奈川区域を合めた師岡保は北で小机保、丸子保と接し、南では保土ケ谷・旭区を中心とする榛谷御厨(はんがやみくりや)と境を接していた。御厨は伊勢神宮領として、土地の豪族、榛谷氏が寄進したもので、他の荘園(私有地)と区別するために用いられた。
 師岡保の範囲は明らかではないが、『俊名類聚』(930年ごろ) によると、久良岐(久良岐郡に属し、鮎浦、大井、服田、星川、郡家、洲名、良椅ともに「諸岡 毛呂季加」と記載されている。師岡保の地名の記載してある文書は先の寿永2年(1183)の頼明の文書(上記画像参照)、貞治6年(1367)の「沙彌至中所領譲状案」(日田文書)に「武蔵国師.(岡)保小帷郷内名田・在家・・・」とあり、洲崎神社の梵鐘名に応安元年1368)「武蔵州師岡保青木村・・・」(『市史稿」仏寺編)とある。
 また、臼田文書の応永32年(1425)「沙彌定勝所譲状」には「武蔵州師岡保青木村・・・」と示されている。 鶴岡八幡宮文書、嘉吉元年(1441)の「関東管領家奉行連署奉書」の中には「・・・武蔵囲師岡保柴関所事、・・・」とあらわされているが明確な位置づけはできない。これらから推察すると師岡保は鶴見一帯から、小帷郷(帷子郷)、入江郷(永享4年正月1日鶴岡八幡宮文書)、 子安郷柴関所(芝生村周辺)、青木村などの地域が含まれる。後の天正18年(1590)4月、豊臣秀吉の出した禁制では「武蔵国師岡保十二ケ郷」(成仏寺所蔵)と書かれており、十二の郷村が存在していたことがわかる(トップの図2-2)。
 青木村 師岡の保のうち、青木だけが青木村と書かれている。すなわち、応安元年(1368)9月、青木町の洲崎明神社の梵鐘(ぼんしょう)名に「武蔵州師岡保青木村洲崎大明神」と刻まれている。村落としてかなりの集落が形成されていたのではあるまいか(トップの図2-1)。また、神奈川湊も開かれていたし、先一述した頼朝の御家人の中に青木丹五なる小武士団の棟梁の.名もみえること、権現山の戰: いで名を高めた青木城の存在も、この青木村が湊を中心に武蔵国の交通、 経済、 軍事上の要害拠点となっていたものと考えられる。
 当時の人びとは、 「谷」と呼ばれる小きな谷間ごとに生活し、その共同体の統合として熊野社を祭った。師岡(現港北区師岡町)の熊野社を中心に市内各地に広がり、青木村権現山にも熊野社が祭られていた。これらの信仰とその土地の開拓は密接で、この両者を通じて人びとは統合され、その地城の開発と生産向上につとめていったのである。2019.4.24



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