郷土の縄文時代
繩文時代というのは、地質年代的には洪積世最後の第四氷期の寒冷な気候に代つて、後氷期の温媛な気候が地球上を支配しはじめ、自然環境が大きく変貎した沖積世になってからで、この新しく変貎した生活の舞台を背景に、生活用具として、「弓矢」や「土器」の出現をみた。
人間が生活用具の一つとして土器を製作したということは、『人間が物の化学的変化を自覚的に利用した最初の事件』(G・チャイルド*1)として、文化史上画期的なことといわれている。わが国における最初の土器が、繩めの文様をもつ特色のあるところから「繩文土器」と呼ばれ、この土器によって象徴される時代を「繩文時代」という。
繩文時代は、ふつう早期、前期、中期、後期、晩期の5時期に、また、早期の前に草創期を加えて6時期に区分することが慣用とされている。しかし、岡本勇氏*2は、歴史的な時代区分の指標に立脚して草創期と早期(約1万年前~約6千年前)を「縄文時代の成立期」、前期と中期(約6,000年前~約4,000年前)を「繩文時代の発展期」、中期末ないし後期から晩期の前半まで(約4,000年前~約3,000年前)を「繩文時代の成熟期」、晩期の後半(約3,000年前~約2,000年前に近くまでを「繩文時代の終末期」とされている(『岩波講座日本歴史-原始および古代』)。 千年を単位とする、約一万年間もの長い繩文時代の、それぞれの時期の特色をよくとらえた時期区分といえる。以下この時期区分にしたがって、繩文時代の生活の様子をみることにする。2019.2.12
*1 Vere Gordon Childe、1892年4月14日 - 1957年10月19日)は、オーストラリア生まれの考古学者・文献学者。ヨーロッパ先史時代の研究を専門とし、新石器革命(食料生産革命)、都市革命を提案した。
*2 1953年から1954年にかけて、八ヶ岳南麓長野県南佐久郡南牧村の矢出川遺跡発掘で日本最初の細石刃を芹沢長介、地元の考古学研究家由井茂也らと共に発見した。