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30相州梅澤庄(そうしゅううめざわのしよう)
押切川のほとりから富士山を眺めることかできました。ここ
に描かれている富士山は新春の夜明け前の姿です。手前には
丹頂鶴の群れも描かれ、お正月らしいめでたい作品です。夜
明け前の薄暗い様を藍色の染料で表現しています。朝陽が当
たって薄紅色に染まった雲が作品のアクセントになり、美し
い作品に仕上いっています。
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31甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)
現在の静岡県と山梨県の境にある籠坂峠あたりが三島越で
す。まず目を奪われるのが中心に大きく描かれた一本の木で
す。画面全体をニつに分ける様に配置されています。この一
の大木がこの作品に絶妙なバランスをもたらしています。
北斎の持味はこのような大胆な構図のセンスだけではあり
ません。夏雲のデザインセンスにも注目です。
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32駿州片倉茶園ノ不ニ(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ)
静岡の茶畑が舞台の作品です。遠くに見える富士山にはまだ
残雪があります。茶畑にはそれぞれの持ち場で作業する人々
が活き活きと描かれています。こういった労働する庶民の描
写は北斎の得意とするとことです。
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33駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん)
大野新田は現在の静岡県吉原市あたりです。沼が多い地域で、
その風土的特徴が見事に描かれています。沼地の先には早朝
の富士山がそびえています。右側の雲が赤く染められ、東の
空から太陽が昇っている様に表現されています。手前に描か
れている荷を積んだ牛と歩く人々にも注目です。芦を大量に
積まれた牛が、荷の重さに耐えながら歩いている様子がリア
ルに描かれています。
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34駿州江尻(すんしゅうえじり)
江尻とは、現在の静岡県清水市にあたります。この作品は北
斎の非凡な才能が存分に発揮されたもので、イギリスの写真
家ジェフウォールに影響を与えたことで世界的に有名になり
ました。線だけで描かれたシンプルな富士山の姿と対比する
様に、街道を歩く人々に風が吹き付け、紙や笠が高く舞い上
がる様子がダイナミックに描かれています。大自然の中に悠
然とそびえる富士山に比べ、たった一陣の風に翻弄される人
々の存在のなんてちっぽけなことでしよう。風に揺れる草木
や衣服の描画も見事で、臨場感あふれる傑作です。 |
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35東海道江尻田子の浦略圖(とうかいどうえじりたごのうら
りやくず)
東海道吉原宿の沖合から見た、雪の残る富士の姿を描かれて
います。田子の浦は富士山の絶景スポットとして古くから有
名で、万葉集にも詠われています。近景の漁船を漕ぐ人々の
様子が細かく描かれています。遠景の浜は塩田で、そこで作
業する人々も小さいながらも丁寧に描かれています。
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36東海道金谷ノ不ニ(とうかいとうかなやのふじ)
この作品の舞台になっている金谷は東海の宿場です。現在
の静岡県島田市あたりで、大井川の西岸に位置しています。
大井川は江戸時代、東海道一の難所といわれていました。橋
が架かっていなかったからです。東海道を旅する人は、大井
の渡しにお金を払って川を渡してもらわなければなりません
でした。この図絵にも客を担いで川を渡る人足が描かれてい
ます。大勢の人が渡っているため、川面が大きく波打ってい
ます。この揺れる水面の表現も秀逸です。
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37遠江山中(とおとうみさんちゅう)
中央にまるで大砲のように置かれた巨大な材木がダイナミッ
クで印象的な作品です。材木の上には職人が登り、ノコギリ
で切っています。材木を支える台木と、その隙間から見える
富士山が三角形の構図を作り、幾何学的に整った印象を与え
ます。このような奇抜な構図は北斎ならではのものです。作
業場付近から立ら昇る煙にも細かい模様線が人れられるな
ど、手の込んだ描写がなされています。人々も活き活きと描
かれ、完成度の高い逸品です。
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38東海道吉田(とうかいとうよしだ)
東海道吉田は現在の愛知県豊橋市にあたり、吉田城の城下町
として賑わっていた場所です。「不ニ見茶屋」という店の中
から見た富士山の様子が描かれています。旅の途中にゆっく
りと疲れを癒やしながら、旅人も富士山の美しい姿を眺めた
ことでしよう。
一休みを終え、再出発しようと準備をしている旅人や、店内
の絶景ホイントから富士を眺める女性、土間でわらじを修繕
する人足など、茶屋に集まる様々な人が活き活きと描かれて
います。
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39尾州不ニ見原(びしゅうふじみがはら)
富士見原は現在の愛知県名古屋市の郊外にあります。この辺
りは遊郭などで栄えていました。中心の大きな樽の輪の中で
作業する桶職人、その頭上に小さく富士山が頭を出している
のが見えます。通称「桶屋の富士」とも呼ばれている図絵で
す。北斎は幾何学的な構図を多用していました。そんな北斎
の特長を最も良くあらわしているのもこの作品で、北斎の特
長をあらわす例として美術の教科書にもよく掲載されていま
す。
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40甲州犬目峠(こうしゅういぬめとうげ)
現在の山梨県上野原市あたりには犬目宿という甲洲街道の宿
場街がありました。そこから次の下鳥沢宿へ向かう途中にあ
ったのが犬目峠です。そこから望む富士山が描かれています。
なだらかな坂を登る旅人はとても小さく描かれ、近景の峠の
緑と遠景の三色刷の富士山の雄大さを引き立たせています。
春の季節感が良く表現された作品で、穏やかな時の流れも感
じさせます。 |
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41甲州三坂水面(こうしゅうみさかすいめん)
河口湖から見る富士山は大変美しく、現在も多くの観光客を
魅了しています。この図も河口湖の北側、三坂峠から望む富
士山を描いたものです。おだやかで、ゆったりとした時間の
流れを感じさせる夏の風景です。この作品には北斎の遊び心
が見て取れます。湖面に映る逆さ富士が雪をかぶった冬の富
士山になっているのです。
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42甲州伊沢暁(こうしゅういさわのあかっき)
甲州伊沢は現在の甲川街道、笛吹川の川岸にあった宿場街で、
現在の石和にあたります。早朝の情景を描いたもので、宿場
を出発する人々が紬かく描かれ、さらに朝霧の向こうには、
うっすらと赤く染まった空に薄暗い富士山の姿があり、とて
も幻想的な作品になっています
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