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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

  筆まかせ現代訳 第六十六話 賄征伐(6)


 塩見も外出した仲間で一杯機嫌で帰ってきて、また賄所の窓の前に行って、外から「弁当として卵をくれ」とせまり、賄がぐづぐづ言って言うことを聞かないので、窓の格子の間から長い竹竿を突っ込み窓の中にあるランプを突き破ってしまった。
 それからまた一室に集まって色々と話し合っているうちに、誰かが「今舎監室は大騒ぎになっている。小使いを校長の所に走らせるなど、ただ事ならぬ慌てぶりだが、それも固より恐れるには及ばない。
 ただ塩屋があとになってランプを壊したことだけは弁解の方法がないのは苦しい」など「あーでもないこーでもない」と盛り上がっている所に、すぐさま小使がやって来て、舎監が川路、菊池、塩屋の3人を呼び出すとのこと、もとより待ち構えていたことなので、今更驚くほどのことではないので、公議に召された赤穂義士の気取りで皆々出て行った。
 ただ一つの密儀というのは「今日はいい塩梅に晩飯のおかずが悪かったということを理由にして賄を懲らしめたという口実にしておいて、檄文のことはおくびにも出さない」云々ということにして、三人の全権公使ももとよりそれを含んで出かけて行った。
 出かけた後は塩屋が舎監室で再三の乱暴をしないかとそれだけを気遣った。30分ほどして3人は無事に帰って来た。皆待ちかねて「どうだったか」と問うと、3人は答えて「舎監室には舎監森田、属官両3名の外に幹事今村、高橋の両人も列席した。初めにそもそもの理由を尋問されたが、かねてから示し合わせていたように今日のおかずが悪く、おまけに賄方が不行き届きだったから、思わず乱暴に及んでしまったわけでで、もとより一時的に腹を立てたのであって故意に暴力を振るった訳ではない」云々と言っていた。「それで処分はどうなったのか」と質問したところ、「格別これといった話はなく、ただこれからは気をつけろと言われただけだ」と、我々はそれを聞いて思うに『案ずるより産むが易し』と喜んで、皆々安心して高枕の夢を結んだという始末である。 2020.7.10

 

 

 

 

 

 

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