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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

 筆まかせ現代訳 第七十話 詩文可否の標準(1)




 昔ある人が詩を作って先生に見せたところ、先生が言うに「君のように意味浅薄なことを言うのは詩にならない。詩の句はもう少し意味を沢山含めて言うべきものである」と、その人これを聞いて部屋に戻り、暫くして一詩を作り、得意顔で先生に示した。先生がこれを見ると「風吹兮猫悲、油貴菓舗(かしや)喜ぶ」の句があった。先生は解読できなかった。「これはどんな意味なのか」と問うた。その人が答えて言うことには「風吹きて砂を飛ばし 砂飛んで人の目に入る ここでその人は盲目となる 生活を計るために三味線を習う しかるに三味線の胴は猫の皮を以って張るために 三味線が増えることは猫の悲しみである また油の値段が高い時は皆夜なべを止めて早く寝る、早く寝る時はどうしてもそれ子が増えることになる、子が増えると菓子を買うからして、自然と菓子屋の喜びとなることなり」と言ったそうだ。
 2020.8.20

 

 

 

 

 

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