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これから話す物語は明治の文豪正岡子規が、青年時代から書き始め25年間も書き綴った随筆を、勝手に現代風に変えて読んでもらおうという不遜な試みである。

 筆まかせ現代訳 第七十六話 帰郷中目撃事件(筆まかせ最終回)



本年(明治22年*1889年*131年前)夏期帰省して一昨年して(抹消 聊か*いささか)変わったもので、著しいものを上げると下記のようになる。
一、三津港に高い煙突が多くできたこと
一、三津松山間に軽便鉄道ができたこと
一、我が家が引っ越したこと
一、老人はますます弱り、小児が非常に大きくなったこと
一、親類に顔の知らない子が多く出来たこと
一、家並みがよくなったこと
一、少ない家には陸軍歩兵少尉・中尉・大尉などという表札の必ずかかっていること
一、立花橋が鉄橋風にできたこと
一、新道ができたこと
一、道後の公園が少しさびしくなったこと
一、我が家が老人かぎし(*だけ?)になったこと。末の妹が嫁いだこと
一、友だちが官員(*役人)になったり、新聞記者となったりしたこと
一、友だちが口髯をはやしたものが多くなったこと
一、友だちの妻帯しない者が多いこと
一、友だちの子を持った者がいること
一、新たに城北に練兵場が設置されたこと
一、知事書記官などが変わったこと
一、私立中学校ができたこと
一、総ての風(*様子)が東京に似ること。言葉も多少東京に似ること
一、沖釣りが流行っていること
一、三津にボートができたこと
一、新浜に生洲ができたこと
一、萱町に公会堂が建ったこと
一、大街道の川上の家を取り除けたこと
一、新栄座という芝居小屋ができたこと
一、囚徒(*囚人)が車を引き鈴を鳴らして塵芥(ごみ)を集めにくること
一、城楼(*城に設けた物見のやぐら)が綺麗になったこと

 二十八歳で結核を発症し三十五歳で逝った子規。病の痛みに堪えながら、俳句・文明論・文学論・言語論等に旺盛に表現する彼の病床には漱石・虚子・秋山真之ら、多くの友が集った。

 

 

 

 

 

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