寄せ鍋と湯豆腐

 

寄せ鍋
 日常細事細事の「鍋がいい」で紹介した鍋の中に「寄せ鍋」と「湯豆腐」がある。ここではこの二つについて少し詳しく見ることにしよう(ウィキペディアと飲食事典:青木純子著などの力を貸して頂いた)。
 寄せ鍋は、汁を入れた鍋に野菜や魚介類など様々な材料を入れて煮込む。色々な具を寄せ集めるところから寄せ鍋と呼ぶようになったと言われている。具にはそれぞれのお国柄を示す特産物も入れられるから、地方によって中身は違ってくる。
 次に出汁(ダシ)であるが、昆布、キノコ、貝類などでとる。味付けには塩、醤油、味噌などが使われる。
 具材はハマグリ、エビ、白身魚、ネギ、ハクサイ、シュンギク、生シイタケ、エノキダケ、ハルサメ等々実に多彩だ。
 次に作り方に移る。(1)コクをきかせたシイタケのつけ汁に、塩、醤油で吸物よりやや濃い目の味をつける。(2)鍋底の水気をよく拭き取り、材料を綺麗に並べて出汁を流し込み、土鍋の蓋をして煮込む。(3)煮上がったらテーブルを囲む各々が、箸で小皿に取り分け、好みのタレ(ポン酢やゴマだれ等)をかけて頂く。具は順次追加して鍋を満たす。最後に食べ残しや、汁が残るので、そこに麺類やご飯を入れて締めとする。このおじやや出汁の効いたうどんの味は格別だ。
 しゃぶしゃぶや闇鍋なども似たり寄ったりの鍋仲間である。
 これから春が終わるまで、鍋料理が食膳を賑わすことになるだろう。

湯豆腐
 私はシンプルな湯豆腐が殊の好きだ。晩飯に毎回出されても飽きないところが良い。
 材料は至って簡単で豆腐、水、昆布のみである。鍋に昆布を敷き豆腐を入れ、温まったところを引き揚げて、醤油やつけダレで食べる。薬味に鼓膜切ったネギや生ショウガをすり下ろしたものを振りかけるとさらに美味しくなる。塩ひとつまみ、あるいは刻んだ大根をいれると豆腐が硬くならず、やわらかいまま食べられるといわれているが、絹ごし豆腐なら固くはならない。むしろ箸でつまむと直ぐ崩れてしまうほどだ。うまく掬い上げて口運ぶことができると更に美味しさが増す。
付けダレと薬味については先に触れたが、色々な食材があるので改めて紹介する。
 付けダレには、醤油、または醤油・酒・みりん・出汁等を合わせたもの、あるいはポン酢醤油などが用いられ、薬味としてネギ、ユズ、大根おろし(紅葉おろし)、削り節などがよく用いられる。変わり種として、卵黄・ニラ・トマトなどが用いられることもある。
美味しい食べ方としては、香りが飛ばないように、煮えるまで鍋を火にかけるのは避け、豆腐がぐらりとよろめく頃に食べるのがよいという話もある。
最後に、 湯豆腐を詠んだ名句を一句「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」久保田万太郎。